体操・橋本大輝のオリンピック連覇への道筋 高校時代の恩師が語る金メダリストのすごさ
【金メダル獲得の要因】 成長曲線が急激な角度で右肩上がりになったのが高校3年。代表入りを意識して取り組んだことで、跳馬の高難度技、ロペスを習得し、あん馬や鉄棒でも難度の高い技をマスターできるようになっていく。そして、あっという間に東京五輪の金メダル候補にまで成長を遂げて大舞台に臨んだ。 「東京五輪は、無観客という特殊な状況ですべて自分の演技をやりきったわけですから、"あいつの心臓はどうなっているんだ"と、メンタルの強さに感嘆しました。まったくビビッていなかった。体操に関しては、まだまだ足りないところがたくさんありますけど、そのなかでも自分の演技をきちんとできる、橋本の持って生まれた強さを発揮した結果です。あれは指導してどうこう、ではないです。鉄棒なんて、あれだけの演技はできないですよ。 五輪の金メダリストになった要因を挙げると、メンタルの強さに加えて、家庭環境が作り出した体の強さです。気持ちの強い子はたくさんいますよ。でも、ほとんどの選手は体がついてこない。その意味で橋本は幸せなんです。耐えられる体を持って生まれたんですから。親に感謝です。育った環境にも感謝すべきことです。橋本と同じ気持ちの子は何人もいますから。 それに加えて、橋本のための強化シフトをしっかりフォローアップしたので、五輪サイクルにうまくはまったと思います。開催が1年延期されてなかったら、(2021年の)全日本優勝はなかったはずだからです。2019年のスーパーファイナルで優勝したことが気持ちの面では大きかったと思います。しっかりと自分の演技をすれば優勝できるんだという自信につながったからです」 パリ五輪代表選考会のNHK杯に、内定選手として出場する予定だった橋本だが、大会直前の練習で右手中指を負傷して欠場を余儀なくされた。現在は順調に回復して、6種目を通した本格的な練習を再開するまでになっているという。 「ポスト内村(航平)と言われることが橋本の励みにはなっているのでしょう。内村くんからは『お前はお前でいろよ』と言われたようで、プレッシャーにはなっていないと思います。今回、指をケガしてパリ五輪に臨むことになりますが、予想よりは治りが早いと言っていて、患部も安定してきたようです。7月頭にオリンピックでやれる演技ができていれば問題ないです。あとは工夫して、心拍数を上げる練習をもう一度やっておけば大丈夫だと思います」