蜜入り不良でも加工は◎ 行き場ないサンふじを「たまごや工房」がアップルパイに 長野県諏訪市
名取鶏卵(長野県諏訪市四賀)が経営する「なとりさんちのたまごや工房」は、蜜が入らず贈答用リンゴにできない地元果樹農家の「サンふじ」でアップルパイを作り、諏訪店など全3店舗で販売を始めた。夏秋期の高温の影響からか蜜入り不良が目立った晩生種。甘みが強く本来アップルパイには用いないが、蜜無しであれば加工に向く―と救いの手を差しのべた。「おいしく召し上がってもらって農家さんを支援したい」としている。 市内と箕輪町で10種類ほどを減農薬栽培している「錦果園」(同市四賀、北澤富士男園主)が育てたサンふじ。工房は県産食材にこだわった洋菓子作りをしており、アップルパイには同園の「紅玉」を用いている。 酸味があり加工に向く紅玉だが、やはり高温の影響を受けて収量減に。通常なら11月末まで提供できるアップルパイも、同月初めには品切れとなった。そうした中で知ったサンふじの異変。行き場を失ったリンゴを受け、髙木健司製菓長がレモン汁などで酸味を加えて試作したところ、果肉感がしっかり残り甘みと酸味のバランスがいいアップルパイに仕上がった。 「一度食べてリピーターになるお客さまもいます」(諏訪店の石澤恵美店長)と好評を得ている。錦果園は「凍霜害に見舞われた年に匹敵する被害があった。全国から贈答用サンふじの問い合わせを受けたが、事情を伝え(発送は)お断りしていた」とし、「価値を付けて商品化してくれた。本当にありがたい」と感謝。名取鶏卵の名取剛社長は「食品ロスの削減にも貢献したいと考えた。お世話になっている農家。地域に根差した事業者として協力し合い、助け合っていきたい」と話す。 諏訪店と上諏訪駅店の市内2店舗と富士見町の八ケ岳店で販売する。価格は税込みで1本1750円、カット590円。来年1月末まで提供できる見込みという。