塩分濃度の高い土壌でも育ちやすい作物を開発…多くの人を飢餓から救うかもしれない(海外)
あるアグリテック企業が、作物を初期から塩水で栽培することで、環境ストレスへのレジリエンス(耐性や回復力)を高くする技術を開発した。 【全画像をみる】塩分濃度の高い土壌でも育ちやすい作物を開発…多くの人を飢餓から救うかもしれない これらは、塩分濃度の高い土壌でも育ちやすい作物だ。地球温暖化等によって、そうした土地が増加していることが問題になっている。 土壌の塩害は、全世界で20億エーカー(約8億1000万ヘクタール)超の土地に影響を及ぼしており、人類が生きるために必要な作物の収量を減少させている。 ほとんどの作物は塩水に弱いが、イスラエルのサリクロップ(SaliCrop)社の研究室で芽を出しているトマト、アルファルファ、タマネギ、イネは違う。 これらは、植物分子生物学者で、サリクロップの共同創設者であるリチャ・ゴドボール(Ṛcā Godbole)が考案したnon-GMO(非遺伝子組み換え作物)だ。ただ育つだけでなく、塩水に耐えて育つ作物だという。 サリクロップは4年前から、スペイン南部でトマトの種子強化技術をテストしてきた。この地域では、壊滅的な干ばつが深刻な塩類集積(塩害)を引き起こし、土壌の塩分濃度が高すぎて作物が効率的に育たなくなっている。 サリクロップの種子を使用することで、テストに参加したトマト農家は収量が10~17%増加し、1ヘクタールあたり1600ドル(約24万円)の追加収入を得たと、サリクロップのカーミット・オロン(Carmit Oron)CEOはBusiness Insiderに語った。 深刻な塩害は、スペインだけでなく世界各地で起こっている。長年にわたる灌漑に、地球温暖化と海面上昇の影響が重なることで、全世界の灌漑土壌の20~50%が塩分濃度過剰となり、作物が育ちにくくなっている。塩害による不作は、世界経済に年間推定270億ドル(約4兆円)相当の損害をもたらしているという。 一方で、食糧を必要とする人の数は増え続けている。国連の予測では、世界人口は2050年までに100億人近くに達する見込みだ。 「劣化しつつある土壌で、より多くの作物を栽培するにはどうすればいいのか。これがサリクロップ創設にあたっての最大の問いであり、動機だった」とオロンCEOは言う。 ゴドボールは、農業技術者のシャロン・デビア(Sharon Devir)とともにサリクロップを立ち上げた。急速に変化する世界の課題に直面する農家を助け、数十億人の飢餓可能性を防ぐという壮大なミッションを掲げてのことだ。 「我々は、このソリューションが不可欠だと確信している」とデビアはBusiness Insiderに語った。