「何度も泣いた」「心に沁みた」との声続々! 阿部暁子が語る、傑作小説『カフネ』誕生秘話!
---------- 車いすテニスを題材にした『パラ・スター』(2020年)で、読者を感動と感涙の渦に叩き込んだ阿部暁子さん。ミステリーに挑戦した『金環日蝕』(2022年)、近刊『カラフル』(2024年)でも極上の人間ドラマを描き出した作家が、最新長編『カフネ』を完成させた。新境地を開拓しながらも阿部節がたっぷり詰め込まれた本作は、どのようにして生まれたのか。そして、どのように磨き上げられたのか? 阿部さんのインタビューを大ボリュームでお届けいたします! (初出:「小説現代」2024年4月号) 【構成】吉田大助 ---------- ──『カフネ』は章が変わるごとにガラッと物語の色合いが変わり、この辺りがゴールになるのかなと想定していた地点が何度も何度も薙ぎ倒されていく。いったいこの物語の出発点はどこだったのか、想像もつきませんでした。ぜひお伺いしたいです。 阿部 きっかけはもう五年以上前になるんですが、「小説現代」の前の編集長さんから「擬似家族ものをやりませんか?」と声をかけていただいたことです。どういうお話がいいかなぁとぐるぐる考えていたところで「小説現代」が今の編集長さんに代わり、初めての打ち合わせの時に「死んだ弟とその元恋人が出てくる話って面白そうですよね」と、擬似家族ものの中に取り入れる新しいご提案をしてくださったんです。「確かに面白そう!」となって、弟の上のきょうだいはお姉ちゃんかな、その人と弟の恋人の女性が、弟が死んだ後で関係を深めていく話はどうかな……と想像がどんどん膨らんでいきました。よくよく考えると「元恋人」って、別に「元」でなくてもいいわけじゃないですか。普通に「恋人」であっても、お話としてはおかしくない。でも、そうではなくて「元」なんだというところから、刺激された部分も大きかったです。 ──女性二人の特別な関係性を書いてみたい、そこに流れる感情の手触りを見つめてみたいんだ、と。 阿部 死んだ弟という存在がお話の中に大きなものとしてあるからこそ、「生きていく」ことをテーマに据える、というのもその段階で決まりました。「生きていく」から「食べる」というモチーフが出てきて、料理人、という片方の人物の職業になったんです。コロナ禍を経験したことも大きかったんですよね。生きること自体がすごく困難になってきているという感触が、書いている間にどんどん強くなっていった。コロナで社会がしっちゃかめっちゃかになっている今だからこそ、「生きていく」というテーマと向き合うことには意味があるんじゃないかと思ったんです。 ──回復しきれない絶望を抱えた状態で、どうやって生きていくか。『カフネ』で描かれたそのテーマは、阿部さんの過去作である『パラ・スター』や『カラフル』、『金環日蝕』にも通ずる部分があると思うんです。 阿部 そうかもしれないですね。自分が小説を書く動機の一つになっているのかもしれません。生きていくことは大変だし辛いこともいっぱいあるけど、それでも生きてくって悪くないよねと背伸びでもいいから思いたい。それを、物語にしているのかもしれないです。