ヒップホップ界で大注目の実業家は1億ドルの資産をいかに築いたのか
次の世代に伝えたいこと
「母たちは高級なものをもっていた。俺の心にいいものをもつことの価値を植え付けてくれたんだ」 ガッティはそう話す。だが一方では、法の外で生きることの負の側面も目の当たりにした。 「俺は有り金すべてが奪われるのを見た」 彼の母親の生活は、新車のメルセデス・ベンツに乗る日々から、ある時、時給5ドル25セントの食料品店で働き、シボレー・キャバリエに乗る生活に変わった。それでもジェラルディンは、以前の生活には戻りたくはなかったと、当時を振り返る。彼女は今、ガッティのレストランのシェフとして働いている。だが、かつての暮らしの名残が家族を痛めつける事件が起こった。今年の1月、メンフィスで、ガッティの兄が射殺されたのだ。 「自分が学んできたことは、次の世代に伝えないとマズイよね」 メンフィスの若者たちを、薬物売買や銃による暴力の悲劇から遠ざけるため、彼らに何を伝えたいかと問われたガッティは、そう答えた。 「俺の今の姿を見せれば、若いやつらは世の中にもっとまともな道があるってわかるだろ」 彼自身はどんな方法でさらなる高みを目指すのだろうか。次の1億ドルはどう稼ぐのだろうか。 「今、多くの種をまいているところだ。多くの人間は忍耐力がないから、翌日に結果を求める。だから現実的な計画が実行できないんだよ」 ガッティは、教育と優れたメンターによる指導を武器にして、来たるエグジットに備えている。 ヨー・ガッティ◎音楽レーベル、コレクティブ・ミュージック・グループ(CMG)の創設者兼最高経営責任者(CEO)。本名、マリオ・ミムス。米国テネシー州フレイザー(ノース・メンフィス地区)で生まれ、3人兄弟の次男として育った。1990年代後半にメンフィスのラップシーンで頭角を現し、2016年のアルバム『The Art of Hustle』でブレイクしたラッパーでもある。23年12月から、UCLAのMBAで学んでいる。
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