【モツあんかけラーメン】大塚のニューウェーブ町中華の名物ラーメンが、ぐぅのねも出ないほどにうまかった話:パリッコ『今週のハマりメシ』第152回
カウンター席に着き、真っ赤なテーブルを愛でつつホッピーでのどを潤していると、注文した料理がスピーディーに到着。 夢にまで見た幸龍軒のモツニラあんかけラーメンに、ついに1ヶ月越しのご対面だ。まずインパクト絶大なのが、どんぶり全体を覆う大量のニラ。 そのニラをスープに浸すようによけてみると、下からは端正なストレート麺、そして、刻まれたもつとひき肉が顔を出すのだった。 まずはスープをズズズとすする。......ん? うまい。そしてどこかで味わったことのあるタイプの味だ。そう思い、なん口かすすってやっと気がついた。これは、完全に町中華リスペクトの味わい。たとえば、僕が好きだったのに今はなくなってしまった、地元の「龍正軒」や「ラーメンハウスたなか」の。鶏ガラや野菜の旨味に、しっかりと化学調味料も効いている(万が一幸龍軒が無化調の店だった場合、あとから謝ります)。なるほど、ここまでやるか。本気にもほどがあるな、大阪王将。 とろみのある濃いめの醤油スープ。しゃきしゃきのニラの、パンチのある香りと爽やかさ。そして、もつの旨味。お世辞抜きで、驚くほどうまいスープだ。それをまとった、小麦香るぱつっとした麺も相性抜群。箸が止まらない。 ちなみにこれは、なんのもつ肉だろう。くさみなく、ぷりぷりの脂としゃきしゃき食感は牛のシマチョウ系だと思うんだけど、もしかして脂身の多い豚の白もつあたりという可能性もある? もしくは数種の部位が混ざってる? 今日2度目の謝罪をしなければいけなくなってしまう可能性があるので断言は避けるが、世の中には知らなくていいことも多いし、とにかく、むちゃくちゃ美味しい「もつ」であるということに変わりはない。 おっと、そういえば、モツニラあんかけラーメンのあまりのうまさに夢中になりすぎ、まだ焼売を食べていなかった。ごろごろっとした肉の食感が特徴の、幸龍軒の肉焼売。塩気はしっかりついているのでひとつめはそのまま味わい、ふたつめは思いきって、卓上の醤油、ラー油、鎮江黒酢などでつまみブーストをして味わう。 ところで、40代もなかばになって最近やっとわかりはじめてきたことがある。それは、「うまいラーメンほど、卓上の調味料をあれこれ足すたびに味がぼやけてゆく」ということ。それゆえ、中華調理店やラーメン屋の卓上調味料の使いどころには、個人の好みやセンスが大いに反映されるものだと思う。 今回も、うまいうまいと言いながら、1/4ほどの麺をプレーンなままで食べた。ただ、どうしても興味が湧き、最後に思いっきりテーブルコショウを足してみたところ......さすが町中華チューニングのラーメン。想像を超えてマッチングし、酒がさらにすすんでしまうのだった。 取材・文・撮影/パリッコ
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