「避難民の退避を優先する」と表明せざるを得ないネタニヤフ首相の「厳しい立場」
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ガザ地区ラファへの侵攻計画をめぐり、避難民の退避を優先すると表明したイスラエルのネタニヤフ首相について解説した。
ネタニヤフ首相がガザ地区ラファへの地上侵攻をめぐり「避難民の退避を優先する」と表明
イスラエルのネタニヤフ首相は3月17日、ドイツのショルツ首相との会談後の共同会見で、パレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの侵攻計画について「その場に人々を閉じ込めたままでは実行しない」と述べ、避難民らの退避を優先する意向を表明した。ラファには避難民ら約150万人が密集し、国際社会から侵攻中止を求める声が強まっている。 飯田)ガザ北部から逃げて来た人たちなども含め、かなり密集しているようです。
ハマスを殲滅させなければ生き残れないネタニヤフ首相
宮家)ネタニヤフさんに限らず、「ハマスを徹底的に攻撃しろ」というイスラエル国民の声は少なくないのです。アメリカ国内にもユダヤ系アメリカ人の様々な意見がありますが、最近の報道を読むと「ネタニヤフさんはやりすぎだ」という声が強まっています。でもネタニヤフさんからすれば、攻撃をやめるわけにはいかないのです。やめてしまったら彼の政治生命は終わりで、責任を取らなければならなくなる。これだけの人が亡くなり、国際的な問題にもなったのだから、失脚する可能性があります。 飯田)やめてしまったら。 宮家)ハマス殲滅まで戦い、勝利を得なければ、政治的に生き残れない。これがネタニヤフのジレンマであり現実です。いま彼を支えている宗教シオニストの連合はガチガチの右派ですので、パレスチナ国家など認めませんし、一昔前なら「え?」と驚くような極端な意見の持ち主たちがイスラエル政治n主流になっているわけです。
ドイツ・ショルツ首相との共同記者会見で発表せざるを得ないということは、かなり「追い込まれている」ということ
宮家)ネタニヤフさんがどんなに頑張ったとしても、戦う以外に生き残る方法はありません。ところが、国際社会の潮流が変わりましたよね。今回は「避難民の退避を優先する」と言っていますが、これはアメリカがずっと言ってきたことです。ネタニヤフさんとアメリカ、特にバイデンさんとは完全に意見が違いますので。 飯田)そうですね。 宮家)さらにドイツは、ホロコーストのことなどもあり、イスラエルに対してはとても気を使うのです。そのドイツのショルツ首相との共同記者会見で発表せざるを得ないということは、ネタニヤフさんもかなり追い込まれているのでしょう。