「イカゲーム」に「マトリックス」も!「スター・ウォーズ」シリーズをひっくり返す重要作「アコライト」のクリエイター&キャストを総まとめ
映画という枠を超えて広がり続ける空前のエンタテインメント「スター・ウォーズ」。銀河を舞台に繰り広げる光と闇の戦いの“原点”に迫るドラマシリーズ最新作「スター・ウォーズ:アコライト」が6月5日(水)よりディズニープラスで独占配信される。『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』の約100年前を舞台にした本作は、ジェダイ黄金期の時代にダークサイドの闇が芽吹いていく物語だ。 【写真を見る】アマンドラ・ステンバーグの、ブラックドレスからチラリとのぞく鍛えられた腹筋がすごい!? 正義の守護者ジェダイ・オーダーのもと銀河共和国に平和があふれていたハイ・リパブリック=“光”の時代に、何者かによるジェダイ殺害事件が発生する。捜査を始めたジェダイ・マスターのソル(イ・ジョンジェ)の前に、ジェダイを去ったかつてのパダワン、メイ(アマンドラ・ステンバーグ)が現れる。 銀河を舞台に壮大なバトルを繰り広げてきた「スター・ウォーズ」だが、ハードアクション・スリラーと銘打たれた「アコライト」では、平和の裏に隠された真実に迫るミステリアスなドラマを展開する。もちろんアクション&スペクタクルも見どころだ。トレーラーでは、フォースを使ったバトルや、色とりどりのライトセーバーが入り乱れる幻想的なアクション、宇宙船が大破するスペクタクルも見て取れる。新機軸を打ちだしながら、しっかり「スター・ウォーズ」らしい見せ場も楽しませてくれるだろう。 ■“攻め”の姿勢でシリーズに新たな風を起こす…注目のショーランナーは誰? このいままでにない「スター・ウォーズ」シリーズを手掛けるのは、個性派&実力派揃いのクリエイター陣だ。製作の指揮を執るショーランナーを務めるのが、ルーカスフィルム初参加となるレスリー・ヘッドランドだ。劇作家としてキャリアをスタートさせ、キルスティン・ダンスト主演のラブコメ『バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!』(12)で映画監督デビューをしたヘッドランドは、タイムリープを繰り返す女性を描いたNetflixシリーズ「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」でもショーランナーを担当。エミー賞では14部門にノミネートされ、撮影、美術、衣装の3部門に輝いた。そんな彼女は幼いころにオリジナル・トリロジーを観て以来「スター・ウォーズ」の大ファン。本作ではショーランナーのほか、エピソード監督・脚本にも名を連ねている。これまで実写ドラマシリーズは「マンダロリアン」「ボバ・フェット/THE BOOK OF BOBA FETT」「オビ=ワン・ケノービ」「キャシアン・アンドー」「スター・ウォーズ:アソーカ」の5本が製作されているが、女性がショーランナーを務めるのは「アコライト」が初となる。 1977年の誕生以来、「スター・ウォーズ」シリーズは強大な悪に抗うジェダイの姿を描いてきたが、本作ではその図式が入れ替わる。「これまで弱者と組織の対立がテーマの一つとして繰り返し描かれてきましたが、本作では悪者たちが弱者でジェダイが組織側になるんです。ジェダイは慈悲深く、“光”の存在だから脅威ではないけれど、彼らの勢力が悪者たちを圧倒的に上回る、そんな時代を描きたかったんです」とヘッドランド。アクション・スリラーというジャンルを含め攻めの姿勢が頼もしい。新機軸を打ちだす一方で「目を覚ましてすぐに悪人になろうと決心する人はいないはず。多くの場合、人々はたくさんの苦しみと闘っていて、それを脅威に感じたり、誰もが自分に敵対していると感じた時に次の行動に移るものです」と語っており、シリーズをとおして脈々と受け継がれてきた“心の中の善と悪の葛藤”というテーマもしっかり継承しているようだ。 エピソード監督にはアンドロイドの死をとおし人とテクノロジーの関係を見つめたA24作品『アフター・ヤン』(21)のコゴナダや、「ウエストワールド」「スタートレック:ピカード」など人気SFドラマを手掛けてきたハネル・カルペッパーなど気鋭の監督たちが参加。プロダクション・デザインにはスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮のSFドラマ「HALO」のソフィー・ベッチャー、音楽にはジョーダン・ピール監督作の常連マイケル・アーベルスと個性派クリエイターが腕をふるう。彼らが「スター・ウォーズ」にどんな世界をもたらしてくれるのかに期待が高まる。 また「アコライト」は『ファントム・メナス』の約100年前の平和な時代の設定だけに、その世界観も見どころだ。ジェダイたちのコスチュームに優雅さが漂っていたり、銀河共和国の首都惑星コルサントの街並みが『ファントム・メナス』の時代と比較してビルの数や形が違っているなど、デザインワークにも注目したい。ジョージ・ルーカスが敬愛する黒澤明へのリスペクトを込め、『スター・ウォーズ』(77)に『隠し砦の三悪人』(58)や『用心棒』(61)の要素を盛り込んだことはよく知られているが、本作もそれを踏襲しているようだ。トレーラーで確認できる粗末な食堂シーンなどは、まるで侍映画のようなので、細部にも目を凝らしてほしい。 ■イ・ジョンジェ、キャリー=アン・モスらトップスターが「スター・ウォーズ」に初参戦 続いて、「アコライト」のキャストを紹介していこう。主人公メイを演じるのがアマンドラ・ステンバーグだ。独裁国家にデスゲームを強制される近未来を描いた大ヒット作『ハンガー・ゲーム』(12)で、カットニスを姉のように慕う悲劇の少女ルーを演じて印象を残した彼女。本作では元パダワンのミステリアスな戦士役で、トレーラーでは短いナイフを自在に操り、ソルらジェダイたちと激しく闘う姿が描かれている。 かつて彼女が師事したジェダイ・マスターのソル役には、世界中で大ヒットした韓国ドラマ「イカゲーム」に主演し、アジア人初となるエミー賞主演男優賞を受賞したイ・ジョンジェ。トレーラーではオビ=ワン・ケノービやアナキン・スカイウォーカーと同じブルーのライトセーバーを操る姿も描かれており、「韓国でも剣術のアクションシーンの経験はたくさんありましたが、ライトセーバーのスキルはまったく違うユニークな挑戦とすぐに気づきました」とコメントしていることから、アクションもたっぷり見せてくれそうだ。 2人のほかにも、「マトリックス」シリーズのヒロイン、トリニティ役でブレイクしたキャリー=アン・モスもジェダイ・マスター、インダーラを演じている。彼女がフォースを操る姿はトリニティとも重なり、思わず胸が高まる。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒(エピソード7)』(15)より2代目チューバッカ俳優として活躍しているヨーナス・スオタモがウーキー族のジェダイ・マスター、ケルナッカ役で出演。『LOGAN/ローガン』(17)でヒュー・ジャックマンの相手役に抜擢され、天才少女として注目されたダフネ・キーンが若きジェダイ、社会派サスペンス『クイーン&スリム』(19)に主演し絶賛されたジョディ・ターナー=スミスが謎の力を持つキャラクターで出演するなど、主役クラスが集結した豪華なキャストに、本作への意気込みがにじんでいる。 ■名クリエイターたちに支えられてきた「スター・ウォーズ」ドラマシリーズ 「スター・ウォーズ」チルドレンのヘッドランドにとって本作への参加はドリーム・カム・トゥルーな出来事だが、これまでのドラマシリーズも「スター・ウォーズ」愛にあふれるクリエイターによって支えられてきた。その代表格がデイヴ・フィローニだ。「スター・ウォーズ」マニアのフィローニは、アニメーションの世界でキャリアをスタートしたあとルーカスフィルムに移籍。劇場用アニメ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』(08)の監督や「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」などアニメシリーズの総監督や製作総指揮を手掛けてきた。各作品をつなぐ物語で高い評価を得た彼は、ドラマシリーズ「マンダロリアン」で製作総指揮とエピソード監督を担当。ショーランナーのジョン・ファブローと共に単独作として見ても楽しめるエンタテインメントに仕立て上げ、ファンはもちろん初めて「スター・ウォーズ」に触れたファンからも高い支持を獲得した。続く「ボバ・フェット/THE BOOK OF BOBA FETT」、「スター・ウォーズ:アソーカ」で製作総指揮を務めたフィローニは、2023年にルーカスフィルムのCCO(最高クリエイティブ責任者)に就任。「スター・ウォーズ」を支えるキーマンとして活躍している。 一方「スター・ウォーズ」への参加を機に、その世界観に魅せられたのがトニー・ギルロイだ。『ボーン・アイデンティティー』(02)にはじまる「ボーン」シリーズなどサスペンスを中心に脚本家として活躍したギルロイは、法廷サスペンス『フィクサー』(07)で監督デビュー。作品賞をはじめ7部門でアカデミー賞にノミネートされ、監督としても高い評価を獲得した。そんな彼が初めて参加した作品が、クリス・ワイツと共同で執筆した『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)。荒くれ部隊の活躍を描いたこの作品は、「ボーン」シリーズを彷彿とさせるハードな展開で多くのファンを唸らせた。さらに『ローグ・ワン』から派生したドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」ではショーランナーを担当。反乱軍の汚れ仕事をしてきたキャシアンの過去を描いた本作は、『ローグ・ワン』同様ハードな仕上がり。エミー賞作品賞にノミネートされるなど、高い評価を獲得し、シーズン2の配信が待機している。 ファンの期待に応えて壮大なサーガの空白を埋めるように展開してきた「スター・ウォーズ」ドラマシリーズ。それに対し約100年前の世界を舞台にダークサイド誕生を描いた「アコライト」は、これまでにないコンセプトを持った “始まりの物語”だ。ファンはもちろん、誰も見たことがない時代を描いているために、初めて「スター・ウォーズ」に触れる入門に最適な作品といえる。スリルとサスペンスで引き込んでいくストーリー、豪華キャストや個性派クリエイターの参加などトピック満載。シリーズに新風を巻き起こす、エンタテインメント大作となるだろう。 文/神武団四郎