低価格の理想郷「ロピア」は、日本版コストコ!? ヨーカドー跡地に続々オープン 実際に行って分かった強さの秘密
現場主義が「レジャー性」をもたらしている
ロピアは店舗運営において、大手チェーンとは異なる体制をとっている。店長が全ての裁量を持つのではなく、精肉・鮮魚・青果といった各部門のトップである「チーフ」が権限を持つ個店主義を導入している。 チーフは個人商店の店主のように売場構成を考え、売りたい商品を選べるほか、販売価格の決定権も有する。そのためロピアは店舗によって商品構成が異なる。成果に応じてチーフの年収も上がっていく仕組みであり、個店主義は社員のモチベーションアップにつながる他、地域のニーズを的確につかめるメリットがあるという。 大手スーパーでは精肉・鮮魚・青果の各部門内で同じような容量のパッケージが並ぶのが一般的だ。対してロピアではさまざまな容量の商品が並び、売場構成が画一的ではない印象を受ける。個店主義に伴う、良い意味での“粗っぽさ”がレジャー性をもたらし、消費者を引き付けているのかもしれない。
コストカット策もユニーク
ロピアはコストカット策も独特だ。かつて大型スーパーで見られた、100円のコイン式カートを導入している。コイン式カートは100円を投じないとロックを外せない仕組みで、所定の場所に戻すと100円が戻ってくる。額は非公開としながらも、カート回収にかかる人件費の削減につながっているという。 コスト削減策の一環として、基本的に支払い方法を現金に限定している(一部店舗で電子マネーの運用を模索するなどの例外あり)。クレカの手数料率は3%前後であり、営業利益率が低いスーパーでは大きな負担となる。その他には、食品スーパー「OK」と同じく、飲み物を常温で販売することで光熱費の削減に努めている。
「大容量ニーズ」を追い風に、今後も快進撃は続きそう
ロピアは売場面積600坪ほどの大型店がメインであり、1店舗当たりの年間売上は約40億円で、一般的なスーパーの2倍以上である。それだけ集客力や販売力が高いということであり、急速に店舗拡大できたのも、消費者が強く支持したからだ。 日本版コストコという異名の通り、一部商品を大容量で提供している点が消費者から評価を集めるポイントだろう。イオンやイトーヨーカドーなどの大手チェーンでは、見かけの値段を安くするためか、小さい容量の商品も多く見かける。「値段は並みで良いから、容量の充実した商品を買いたい」――こうしたニーズをつかみ、ロピアは伸びたのではないだろうか。その他、個店主義がもたらす、商品の非画一性によるレジャー要素も見逃せない。店内では、コストコのように商品選びそのものを楽しんでいる客も目立った。 ロピアは2031年までにグループ売上高を2兆円にすることを目標とし、近年では外食事業も強化している。強気な目標設定を達成できるかは未知数だが、大手スーパーが「大容量ニーズ」に対応できない限り、ロピアの成長は続きそうだ。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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