誰もが絶望する…日本人が意外と知らない「南海トラフ巨大地震の歴史」
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
発生確率が高まる南海トラフ地震
南海トラフ沿いの地域は100~150年の周期で大規模地震が発生しており、前回の襲来から約80年が経過した今日、発生確率は日を増すごとに高まっている。 南海トラフは、静岡県の駿河湾から九州の日向灘沖までのフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の地形を形成する区域を指す。 南海トラフ沿いのプレート境界では海側のフィリピン海プレートが、陸側のユーラシアプレートの下に1年あたり数センチの速度で沈み込む。その際のひずみが蓄積され、ユーラシアプレートが跳ね上がることで発生する地震が南海トラフ巨大地震だ。
歴史の転換と重なる過去の南海トラフ地震
南海トラフ巨大地震は一体、何が怖いのか。真っ先に挙げられるのは国民の半分が被災する「異次元の被害レベル」だ。 政府は東日本大震災以降、「想定外」をなくすため、被害想定は起こり得る最大規模の地震で見積もっている。2013年5月の「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」では、「まさに国難とも言える巨大災害」という強い表現で警鐘を鳴らしている。 「最大クラスの巨大地震・津波については、千年に一度あるいはそれよりもっと発生頻度が低いものであるが、仮に発生すれば、西日本を中心に甚大な被害をもたらすだけでなく、人的損失や国内生産・消費活動、日本経済のリスクの高まりを通じて、影響は我が国全体に及ぶ可能性がある」。 過去の南海トラフ巨大地震の発生は、歴史の転換期と重なる。前回は1944年12月に南海トラフの東側で「昭和東南海地震」が発生し、そのわずか37日後に、内陸直下の地震「三河地震」を引き起こしたとされる。 この二つの地震は戦時下であったため地震の大きさに比べ十分な資料が残されておらず「隠された大地震」とされる。二つの地震の間には、名古屋への初の本格空襲があり、現在の名古屋ドームの場所にあった日本一の飛行機のエンジン工場が被災するなど重工業地帯が甚大な被害を受け、日本の敗戦を早めたとも言われる。2年後の1946年12月には南海トラフの西側を「昭和南海地震」が襲った。 歴史上、さらに一つ前の南海トラフ巨大地震は、江戸時代に起きた1854年12月23日の「安政東海地震」、翌日の「安政南海地震」で、その翌年に首都直下の「安政江戸地震」が起きた。 さらに1856年には安政の台風、1858年にはコレラが流行し、度重なる災害が江戸幕府の終焉の引き金の一つとされている。 この巨大地震の特徴は、超広域で強い揺れとともに巨大な津波が発生し、避難を必要とする津波の到達時間が「数分」という極めて短い地域が存在することにある。 先の「最終報告」は、その被害が「これまで想定されてきた地震とは全く様相が異なるものになると想定される」と位置づける。今風に言うならば、まさに「次元の異なる」「異次元」の被害が生じると予想されているのだ。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)