【特集】「障害者のわたしが先生になる理由」パリ・パラリンピックでメダルを目指す片腕のスイマーの教育実習に密着 障害があるからこそ伝えられること
みんなと同じように動き、障害のある右腕で握手をする。いつしか彼女の周りには、自然と子供たちの輪ができていました。 (宇津木さん) 「生徒の勉強にもなると思っています。そういう人がいると。(身近に)いないと、『あの人は変だな』と変な目で見る人がいたりとか、障害に対してネガティブなイメージを持つ人もいるので、そういう人が無くなっていくためにも、小学校の先生になって小さい時にネガティブな考えを失くしていければいいかなと思います」
3歳でプールをはじめ、中学生でいきなり“アジア新記録” 健常者の大会にも出場「自分が健常者と戦う時は障害者だと思っていない」
最初のプールは3歳のときでした。その後、中学生で競技として取り組み始めるといきなり“アジア新記録”をマーク。この時、東京パラリンピックへ向けメダルが期待される存在になりました。高校生の時には健常者の大会にも出場。もっと速くなる自分を疑いませんでした。 (宇津木さん) 「もっと(健常者の選手と)いい勝負をしたかった。本当は勝ちたかったけどなかなか。自分が健常者と戦う時は障害者だと思っていない。皆と一緒だと思っているので(違うとは)全く思っていない。皆一緒なんで」
現在、宇津木さんは大阪体育大学に通う3年生です。京都の実家を離れ1人暮らしをしていて、料理も慣れた手つきでこなします。実習期間中は大学を離れるため練習は週末の自主練習のみ。アスリートとしては不安になりますが、いまは子どもたちが最優先です。
初めての授業での課題は「手の面積を求めること」障害を持つからこそできる彼女だけの授業、そこで伝えたかったこととはー
学校教育実習ではじめて教壇に立つ日が来ました。 (宇津木さん) 「いまから先生の手形を配ります」 (生徒) 「え~」 面積を求める授業を行いました。求める面積は宇津木さん自身の手の平です。 (宇津木さん) 「めっちゃ純粋このクラス。手形を渡したら皆まず(自分と比べて)調べ始めるでしょ。なんてかわいいんだろう」
宇津木さんには、この教育実習の間に子ども達に伝えたいことがありました。“コロナ禍”前の2019年、当時は東京パラリンピックまであと1年という時期でした。宇津木さんは、ここまでの競技人生で一番遅いタイムを記録します。遅くなった原因は分からずまったく光が見えない時期でした。笑顔がなくなり、時にはプールサイドでふさぎ込むこともありました。
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