「いつ?どこで?」ダニの刺し口がない感染例も 致死率3割のマダニが媒介する危険な感染症が増加中
長崎県内でマダニなどが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群=SFTS」が5月19日までに8件確認され、例年の同時期よりも多くなっている。マダニの活動が活発になる春から秋にかけては、マダニに刺される危険性が高まる。これから屋外で活動する機会が増える中、SFTSへの正しい知識と対処法が必要だ。 【画像を見る】発熱、意識障害…危険な感染症「SFTS」が増加中
今年初「SFTS」で80代女性が死亡
2024年5月、マダニが媒介する感染症「SFTS」で長崎市の80代の女性が死亡した。 長崎市によると、女性は5月15日に発熱や意識障害の症状があり、2日後の17日に死亡した。2024年に入り県内で死亡が確認されたのは初めてだ。ダニの刺し口は見つからなかったが血液検査で感染がわかったという。感染経路は現段階では不明だ。
治療薬はなし 致死率は3割
マダニは家の中にいる小さいダニとは違い、3~4mmほどと大きく、山林や草地などに生息している。 SFTSは、SFTSウイルスを持ったマダニに刺されることによって感染する。6日から2週間の潜伏期間を経て、主に発熱・頭痛・下痢・下血といった消化器症状などが見られ、重症化すると多臓器不全に陥り、死亡することもある。日本における致死率は27%と高く、現在までに有効な治療薬やワクチンはなく、発症した場合は対症療法が行われる。 厚生労働省によると、国内で初めて確認されたのは2013年で、それ以降、毎年60~100人の患者が報告されている。SFTSはウイルスを有するマダニに刺されることで感染すると考えられているが、ペットから飼い主や獣医師が感染するケースが多数報告されており、大量のウイルスが含まれているペットの体液になんらかの形で接触したことで感染してしまうケースもあるという。
ヒトからヒトへの感染 初確認
2023年には国内でヒトからヒトへの感染例が初めて確認された。 国立感染症研究所によると、2023年4月、発熱などで救急外来を受診し入院した90代の男性を男性医師(20代)が診察。その際、医師はマスクはしていたものの手袋をせずに診察したが、患者の体液に触れるような診察や処置はしなかったという。患者は入院翌日にSFTSと診断され、その後症状が急速に悪化し、受診から3日後に死亡した。死亡から9日後に男性医師には、発熱や下痢、頭痛などの症状が現れ、検査の結果、SFTSであると診断された。 SFTSのヒトからヒトへの感染は中国や韓国などで複数報告されているが、これが国内で初めてのヒトーヒト感染事例となる。男性医師は男性患者の死後処置の際、マスクや手袋、ガウンを着用したがゴーグルはつけていなかったという。 この感染例に、国立感染症研究所では2つの可能性をあげていて、「男性が来院した初診時に、手袋やゴーグルをつけなかったこと」と「死後処置後にアイガードを使用していなかったこと」だ。処置や防護服を外す際に血液に接触した可能性も考えられるとしている。