手に汗握る韓国スリラー「殺し屋たちの店」で、イ・ドンウクのクール&ミステリアスな魅力が爆発!
亡き叔父に“殺し屋御用達のオンラインショッビングサイト”を遺されたことから、突如、殺し屋たちに命をねらわれることになった女子大生の生き残りを懸けた戦いを描く、ディズニープラス スターで配信中の「殺し屋たちの店」。なかでも注目なのは物語の鍵を握る謎めいた叔父を演じているイ・ドンウク。日本でも人気を博した「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」で知られるイケメン俳優だ。銃撃や肉弾アクション、そして優しい叔父さんぶりで話題を集める彼のキャリアを振り返りながら、「殺し屋たちの店」の見どころを紹介しよう。 【写真を見る】「軍の動きを取り入れたアクションも新鮮だった」と語るイ・ドンウク ■「トッケビ」で見せたコン・ユとの相性抜群の掛け合いがブレイクのきっかけに イ・ドンウクは1981年生まれの現在42歳。芸能界入りのきっかけは、高校時代にアパレルブランドの専属モデルの選抜大会で大賞を受賞したこと。その後モデル経験を経て1999年、高校3年の時に短編ドラマ「道の外にも世界はある」で俳優デビューを飾り、若手スターの登竜門と言われる「学校」シリーズで頭角を現していく。そして人気脚本家・ホン姉妹によるラブコメディ「マイガール」がヒット、除隊後復帰作となった「女の香り」では「私の名前はキム・サンスン」で知られるラブコメの女王キム・ソナと共演し、余命半年のヒロインと出会い大きく変貌していく無気力な御曹司役を好演してみせた。 イ・ドンウクがイッキにブレイクしたのは、2016年の大ヒットドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~』。同作は不滅の命を持つ“トッケビ”と、その命を終わらせることができる運命を背負った女子高生が織り成す恋模様をファンタジックに描いたラブストーリー。そのなかで、イ・ドンウクは記憶喪失で名前も過去もわからないという死神として、コン・ユ演じる主人公のシンと奇妙な同居生活をする役回り。黒い帽子に黒のコート&スーツというスタイリッシュな衣装を184cmの長身でサラリと着こなし、彫りの深いビジュアルで、死神という人間離れしたキャラクターをモノにした。同作ではメインカップルだけでなく、死神とチキン屋店長の女性との恋模様が見どころになり、さらに、トッケビのシンと死神の間には芽生える男同士の友情(=ブロマンス)が話題を呼んだ。一つ屋根の下で男2人がわちゃわちゃと子どものようにケンカしたりしながらも、生と死を超越した彼らだからこそ理解し合い、一番の理解者になっていく。韓流ドラマの数あるブロマンスものの中でも“最強”という声も多い。ちなみに、同作は韓国で最高視聴率20.5%を記録、第53回百想芸術大賞では大賞受賞したほか、主要アワードを賑わせ、日本をはじめアジア圏でも大ヒットするなど韓国ドラマ史に残る名作となっている。 この「トッケビ」を機に、クセの強い作品にも挑むように。2019年に出演した「他人は地獄だ」はWEBトゥーンが原作のサイコスリラー。ワケありな安アパートを舞台に田舎から来た青年が自分を見失っていくというストーリーで、イ・ドンウクは奇妙な住人たちばかりの中で唯一まともで主人公に親切な歯科医という役どころ。ただし、不敵な笑顔を浮かべるなど、ミステリアスな雰囲気を不気味なニュアンスに転じて怪演している。 そして20年には、ファンタジー・ロマンス「九尾狐伝~不滅の愛~」に主演。伝説の妖怪・九尾狐といえばこれまで女性のイメージが定番だったが、持ち前のセクシーな魅力を発揮して神秘的な力を持つ九尾狐像を作り、“死神”に次いでハマり役に。2023年には続編「九尾狐伝1938」も作られている。またアクションコメディ『バッド・アンド・クレイジー」では出世のためなら、多少の悪事には目をつぶるという小市民的な刑事役に挑戦。ウィ・ハジュンとの凸凹コンビぶりとキレのいいアクションで楽しませ、新境地をのぞかせた。 ■ジンマンのミステリアスなたたずまいからのぞく人間味がたまらない! 甘いマスクで御曹司役から、死神や九尾狐といった人間離れしたキャラクターに、サイコなキャラクター、そして二枚目半な男まで多彩なキャラクターに挑み、演技の幅も広げてきたイ・ドンウク。イケメン俳優と言われてきた彼も40代、文字通りイケオジ世代となって挑んだのが、「殺し屋たちの店」だ。オープニングでは大学生になったばかりの姪ジアンからうざがられる叔父のジンマンという役どころで登場。そんな彼が自殺したと警察から知らされたジアンは、両親を亡くして以来、唯一の肉親で親代わりだったジンマンの自殺が信じられず、幼なじみのジョンミンの助けを借りて真相を探るなかで、叔父が殺し屋御用達のオンライン兵器販売サイトを運営していたことが判明。そうこうするうちに、のどかな田園地帯にポツンと建つ叔父の家を謎の殺し屋集団が取り囲み、銃を搭載した何台ものドローンや四足歩行の殺人ロボットによる容赦ない攻撃が始まる。絶体絶命の危機に陥ったジアンは叔父から教えられた様々なサバイバル術を駆使し、敵に立ち向かっていく…。 物語はジンマン亡きあと、ジアンが殺し屋集団を相手に殺るか殺られるかの攻防戦を繰り広げる一方で、幼いジアンとジンマンが暮らすようになってからの10年間の過去を遡りながら、謎に包まれていたジンマンの真実の姿が少しずつ明らかになっていく。ミステリアスな役どころが得意なイ・ドンウクだけに、寡黙で素っ気ない素振りは裏に何があるのかと期待せずにはいられない。冷静沈着にしてタダ者ではないというオーラを放つ一方、ふと見せる憂いを帯びた眼差しなどとても細やかな演技から見える人間味が素敵だ。 そんなドンウクといい相性(ケミ)を見せるのが、姪のジアンを演じるキム・ヘジュン。Kゾンビ時代劇「キングダム」で冷酷で強欲な王妃役、「コネクト」や「調査官ク・ギョンイ」ではサイコキラーを演じてきたが、本作では叔父の死の悲しみも癒えぬうちに生死を賭けた壮絶な闘いの中に投げこまれ、戸惑いながらも乗り越えて行くヒロインを等身大に演じて共感を呼んでいる。また、ジアンの幼い頃を演じている子役ア・セビンが上手い! 本作の原作者であるカン・ジヨンの同名ドラマ「殺人者の買い物リスト」などで活躍する名子役だが、本作ではイ・ドンウク相手に健気な少女を演じて泣かせる。ロマンス俳優ドンウクの素敵な叔父さんぶりを見事に引き出している。激しい銃撃シーンもふんだんに描かれる謎多きミステリーアクション「殺し屋たちの店」でイ・ドンウクの新しい魅力をたっぷりと楽しんでほしい。 文/前田かおり