倒産前の事業譲渡、5年間で946件 食品製造、宿泊、飲食店などが上位に
「事業譲渡後の倒産」 動向調査
主要な事業を他社に譲渡し、その後に特別清算や破産などの倒産手続きに入る「事業譲渡後の倒産」が、過去5年間で946件あることがわかった。5年間の倒産件数(3万7,707件)の2.5%にあたる。2023年度は倒産した9,053件(前年度比31.5%増)のうち、210件(同32.0%増)と大幅に増えた。 倒産形態は、清算型の特別清算が547件(構成比57.8%)と最も多く、次いで、破産が369件(同39.0%)と、上位2形態で96.8%を占めた。清算型倒産では企業は消滅するが、事業譲渡により事業モデルや雇用は別会社に引き継がれて存続するため、実質的には事業再生の一形態とみなすこともできる。 事業譲渡後の倒産は、産業別ではサービス業他が320件(構成比33.8%)で最多だった。ホテル・旅館などの宿泊業、飲食店が多く、施設や店舗を「居抜き」で利活用できるメリットが背景にある。次いで、生産設備などを所有する製造業の228件(同24.1%)、店舗やスタッフを抱える小売業の125件(同13.2%)と続き、いずれも事業譲渡が成立しやすい業態が上位に並んだ。 負債額別では、負債1億円以上5億円未満が最多の377件(同39.8%)で約4割を占めた。次いで、負債10億円以上が163件(同17.2%)で続き、一定の事業規模の企業が多いのが特徴だ。 倒産前の事業譲渡は、企業が培ってきたノウハウなどの経営資源を棄損せず、従業員の雇用を守るうえでも有効な手段の一つになっている。コロナ禍を経て過剰債務を抱えた企業を中心に、倒産、廃業が増えているが、一方で準則型私的整理の広がりで事業再生の手法が多様化しており、こうした「名を捨てて実をとる」ケースがさらに増えることも予想される。 ※本調査は倒産集計時点で、主要事業を他社へ譲渡していることが判明した事例を「事業譲渡後の倒産」と定義し、集計分析した。 ※再建型倒産で、再生計画に基づいて倒産後にスポンサーなどに事業譲渡したケースは集計の対象外。調査は今回が初めて。