<春に挑む・東海大菅生センバツへ>/下 開花待ち闘志燃やす 夏秋の無敗、チームの財産に /東京
2020年は甲子園のない夏だった。都の独自大会に3年生中心で臨むチームがある中、東海大菅生はベストメンバーで勝ちにこだわった。1年生の福原聖矢をレギュラーで起用。2年生左腕・本田峻也が先発し、同学年の堀町沖永(おきと)は西大会決勝でサヨナラ打を放った。 東京一をかけた東西対抗戦を控え、本田は若林弘泰監督(54)から「肩は大丈夫か」と声をかけられ、「ダメです」と答えた。 うそだった。本田は杉浦敦基(3年)が気に掛かっていた。同じ左腕でさまざまな教えをもらった。最後の試合は先輩にマウンドに立ってほしかった。 3年生たちの考えは違った。移動のバスで、寮の部屋で、本田を説得した。「お前に投げてほしい」。杉浦から真っすぐ目を見て言われ、本田は気持ちを変えた。 8月10日の東西対抗戦で本田は3年生の思いを背負って投げた。東東京を制した帝京打線に5回を被安打4、2失点と好投した。 この試合、途中から中堅に入った2年生の栄塁唯(るい)は九回、正確なバックホームで相手の追加点を阻止した。「流れが変わった」とベンチは盛り上がった。 2点を追うその裏、先頭の1番・千田(ちだ)光一郎(2年)の中前打を足がかりに追いつき、最後は3年生の臼井直生のサヨナラ打で逆転勝利を収めた。 最高の形で終えた夏の経験が、新チームの大きな財産になった。スタンドで見守った小池祐吏ら1年生も同学年の福原の活躍に刺激を受けた。 秋の都大会に向け、若林監督は「優勝しか甲子園はない」と発破をかけた。準優勝だった2年前にセンバツを逃しており、選手たちもよく分かっていた。本田は3年生の指導でフォーム改造に取り組み、制球力に磨きをかけた。チームは夏秋を無敗で駆け抜けた。 3月19日のセンバツ開幕まで1カ月半。課題の長打力をつけるために下半身を強化し、木製バットで球を芯で捉える練習をしている。投手は本田に加え、1年生の本格右腕、鈴木泰成が存在感を増している。夏に右肘を痛め、秋を欠場した主将の栄も復帰した。若林監督は「かなり競争が激しい。(夏の甲子園4強の)2017年を超えるチームになる」と胸を張る。 「行くぞ行くぞ行くぞー!」。寒風の中、あきる野市のグラウンドで白球を追う選手たちは、春を見据えて闘志を燃やしている。【林田奈々】 〔都内版〕