#ネオ昭和 インフルエンサー・阪田マリンが語る、昭和の魅力「便利すぎない“不完全の中の美しさ”」
昭和の魅力は「不完全の中の美しさ」
「発信を続けていたら、私のことを面白がってくれる方々がお声掛けくださって。もっと昭和の良さが広がればいいと思っていましたし、自分の好きなものを発信できるお仕事って素晴らしい!と思い、今は様々なことに挑戦中です」 昭和の魅力について問うと、阪田は「一言で言い表すのが難しいですが」と前置きし、「不完全の中の美しさ」と語った。文化とは人がより便利になるために発達していくものだが、阪田からすれば、その便利さが人の成長を止めているという。 「便利すぎると感情の上がり下がりがなくなって、平坦な人になる気がしていて。例えば部屋の掃除。自分で掃除するとなると『面倒くさいなあ』となるし、終わった後の『綺麗になってよかった!』という嬉しさで、気持ちの振れ幅が生まれますよね。それが家にルンバがあれば、ボタンを押して終了。それ以上に気持ちが沸き上がることがないんですよね。 この感情の振れ幅って人間にとってすごく大事だと思うんです。だって、感情が動かなくなるってそれは機械も同然ですよ。好きな人との連絡も、今はLINEやSNSもテレビ通話もあって相手をすぐ感じられるけれど、ドキドキ感があまりなくて。 昭和は実家の黒電話をかける以外の方法がなくて、しかも電話しても本人がでるかまずわからないし、お母さんやお父さんが取る可能性もある。だからこそ、好きな人が出たときの嬉しさって何倍にもなるんです。それに当たり前が溢れていたら人間力って育たないと思うんですよね」 物質の豊かさが精神の豊かさの成長を妨げているという。さらに阪田は現代に漂う閉塞的な空気感も、この便利さがもたらしていると語る。
昭和には全員に“未来”があったような気がする
「昭和には全員に“未来”があったような気がするんですよ。『この先は明るいぞ!』って、みんながみんなでこの先の人生を盛り上げていこうというイメージを持っていて。なんというか、今って『自分さえよければ』の人が多く、そもそも時代に活気がないからか目に光がない。電車に乗っていても、みんな下向いてスマホ触るだけで、周りを一切見ていない。すごく人と人との関係が寂しくなっている気がするんです。 昭和は技術が発達していないからこそ、人と顔を合わせることを大切にしていた気がしています。だって『昭和の電車の中』と調べると、みんなで楽しそうに話している姿が出てきますからね。LINEやSNSやと、相手の表情がどうなのかサッパリわからない。人との繋がりの面で、やっぱ昭和の方が豊かでいいなあと思っちゃいますね」 こうした利便性がもたらす悪影響にウンザリし、高校時代には担任に1か月以上に渡り携帯電話を預けたこともある。現代人にとって、ましてや10代の時分において、もはや体の一部と言ってもいい携帯電話を手放すことで、阪田は大きな学びを得たという。 「学校でも家にいても暇さえあれば携帯を見ちゃうんです。その瞬間は良いかもしれないけれど、結局はムダな時間になっちゃう。これは悪い影響だ、そんな生活ダメだ!と、先生に『机に入れて預かっておいてください』とお願いしたんです。友だちに不便じゃない?と聞かれたのですが、全然余裕でした。むしろ空いた時間は、『ブラックジャック』を読んだりレコードを聴いたりと、有意義かつゆったりとした時間を過ごせたんです。 このときに、この時代が目まぐるしくて息苦しく感じるのは、全部スマホのせいなんだなと実感しました。あまりにも何でもできてしまうからこそ、色々なものを奪っていくなあって。正直な話、仕事上必須の今でも時折投げ捨てたくなる瞬間があります。なので、すでに老後は携帯を捨てる人生にしようと決めているんですよ(笑)」 (取材・文/田口俊輔)
田口 俊輔