創部12年でセンバツ切符 和歌山東を導いた「魂の野球」
創部12年目で春夏通じて初の甲子園出場が決まった和歌山東。2021年秋の和歌山県大会準決勝では同年夏の甲子園覇者・智弁和歌山、近畿大会準々決勝では同夏4強の京都国際に、いずれも競り勝った。念願の聖地に導いた原動力は、強豪相手にも決して諦めない「魂の野球」だった。 【あのドラ1も】昨年センバツからプロの扉開いた選手たち グラウンドは草ぼうぼう、ノックをしてもボールを追わない選手たち――。硬式野球部は10年、軟式から変わる形で誕生した。当初はベンチや防球ネットもないなど設備が整わず、軟式から残った部員たちのモチベーションも低く、練習の無断欠席も日常風景だった。「ゼロではなくマイナスから作り上げた」と米原寿秀監督(47)は振り返る。 「技術的なことより先に、グラウンド整備、あいさつ、声の出し方から教えた。高校野球はどういうものなのかを伝えていった」 そんなスタートだったが、4年目の13年夏に和歌山大会で4強入り。16年秋の県大会で優勝し、出身の津森宥紀投手がプロ野球・ソフトバンク入りするなど着実に力を付けてきた。 21年秋の県大会準決勝の前日。相手は直前の新人戦でコールド負けした智弁和歌山で、監督は選手たちに語りかけた。「ひるむことなく自分たちの持っている『魂』を全部ぶつけろ」。成功体験が少なく「これくらいでまあいいか」と思っていないか。「どんな展開でも諦めるな」と伝えた。 選手たちは応えた。先制して加点を重ね、相手の追い上げを小刻みな継投で振り切って5―4で雪辱。此上平羅主将(2年)は「やればできると自信になった」と振り返る。続く近畿大会の準々決勝・京都国際戦は最終回に1点差に迫られながらもチーム一丸で守り切って下馬評を覆す。さらに勝って準優勝に輝いた。 出場決定の知らせに、此上主将は「素直にうれしい。魂の野球を全国の人に見てもらいたい」。米原監督は「いろいろな子供たちがつないできた12年。さまざまな人に感謝したい」と話した。【橋本陵汰】 ◇和歌山東 1974年開校の県立全日制普通科校。2年次から▽資格取得などを目指すビジネス▽体育や芸術などに取り組むクリエイティブ▽大学などへの進学を目指すアカデミー――の3コースに分かれて学習する。 校訓は「自主・自律・敬愛」。教科学習とクラブ活動の両立を図りながら、「個と全体の調和がとれた教育」に力を入れる。生徒数は男子290人、女子230人。 硬式野球部は軟式から変わる形で2010年に創部。当初から指揮する米原寿秀監督は前任の和歌山商で春に1度、甲子園に出場している。プロ野球入りしたOBに、ソフトバンクの津森宥紀投手がいる。剣道部、レスリング部などが全国レベル。 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では、大会期間中、全31試合を中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu)でも展開します。出場決定号外はデジタル紙面でご覧いただけます。