「本当はもっと『大好きだよ』と言ってあげたかった」内密出産の実母の証言
KABでは「内密出産」をした女性から話を聞くことができました。内密出産は、妊娠を周囲に明かせない女性が病院以外には身元を明かさず出産する仕組みで、乳児の遺棄や殺害を防ぐ目的で熊本市の慈恵病院が、国内で唯一、導入しています。この女性は、一時はお腹の赤ちゃんを殺そうとまで思いつめていたと言います。カメラの前で訴えたこととは… 「内密出産」当事者の証言も… カメラが追った2年半の記録
性被害に遭い妊娠、病院を受診するも… 「もう死ぬしかないんだろうな」
「小学校のころから父親からのDVや暴言を受けていてその恐怖もあり家族に対して妊娠を打ち明けることができなかった」 西日本に住む、美咲さん(仮名)。性被害に遭い、妊娠しました。子どもの父親は分かりません。 (Q妊娠を家族に打ち明けたとしたら?) 「殺されるだろうなって確実に」 妊娠に気が付いたのは生理の予定日を1週間ほど過ぎたころ。警察に相談することはできませんでした。病院を受診し、中絶をしたいと医師に相談しましたが、子どもの父親のサインとお金が必要だと言われ、諦めました。地元の妊娠相談窓口にも助けを求めたと言います。 「『辛いね』だったり、『まずは親御さんに連絡してみて』って。できないから相談してるのに。もう相談しても意味ないなって。本当に言葉に表すことができないんですけど、その時の気持ちってもう死ぬしかないんだろうなって」
追い込まれ一時は赤ちゃんを殺して遺棄することも考えた美咲さん
追い込まれた美咲さん(仮名)は、自らの命を絶つ事や、お腹の赤ちゃんを殺して遺棄する事を考えるようになりました。 「赤ちゃんが死ぬためにODをしたり過度な飲酒喫煙をしたり、ちょっとお腹が出てきた時にお腹を自分で殴ったり。すごい“アドレナリン”が出てくるんですよね私なら殺せるし、私なら何も苦しくないし。一番仲が良い友達にどうすればいい?って私は捕まる覚悟でいるから遺棄する覚悟だからって言ったら、まだ内密出産、こうのとりのゆりかごっていうのが熊本にあるんだよって言われて」
友人の言葉をきっかけに慈恵病院へ 内密出産で赤ちゃんを出産
藁にもすがる思いで慈恵病院を訪ねました。病院で保護されると次第に心境に変化が表れたといいます。 「お腹に話しかけたりすると偶然かもしれないんですけど、お腹を蹴ってくれたりだとか。そういうのがすごい嬉しくなって。自分も赤ちゃんも守れるって思ったんですよね」 しばらく病院に滞在し、その後、内密出産をしました。 「赤ちゃんの声を聞いたらやっぱり、『ごめんね』しか言えなくって。初めて抱いた時もやっぱり一言目は『ごめんね』。本当はもっと『大好きだよ』とか言ってあげたかったんですけど、『産んでしまってごめんね』だったり、『今まで辛い思いさせてごめんね』っていう気持ちにしかならなくって」