タイムスリップしたかのような百六十年余の料亭で、歴史に磨かれた美味を満喫
【百年料亭】望洲楼/愛知県半田市
創業は江戸末期の1855(安政2)年。現在地に建物を移した明治の初め頃に、屋号を望洲楼と改めた。望洲楼のある亀崎は知多半島の付け根にある古い港町で、かつては隣の半田よりも栄えていたという。1886(明治19)年には福沢諭吉が訪問し、望洲楼で宴席を設けるなど、多くの著名人も訪れており、1937(昭和12)年に吉田初三郎が描いた「月の名所亀崎望洲楼鳥瞰(ちょうかん)図」 からは、繁栄を極めた当時の町の様子がうかがえる。 望洲楼の特徴は、鳥瞰図にも見られる独特の建築様式にある。衣浦(きぬうら)の海を一望する丘の斜面に大小の離れ座敷が三層に設けられ、それらが一本の階段で繋がっているのだ。階段は地形に沿ってうねり、迷宮を歩くような不思議な感覚を覚える。
当時にタイムスリップしたかのような館内で味わうのは、名物の鯛の兜焼きや鎌倉和え、エビの飯蒸しなど、奇をてらわず真の美味を追求した料理の数々。目の前に広がる衣浦や三河の海の幸を中心に、広く全国から食材を求めるという。また亀崎は古くから酒造の町でもあり、地の銘酒は料理をひときわ引き立ててくれる。 亀崎の歴史を凝縮したような望洲楼だが、新しい試みにも積極的だ。女将が案内する「和食お楽しみ講座」では、料理を楽しみながら和食の作法やお座敷のマナー、料亭の上手な使い方などを教えてもらえる。料亭は初心者という人には、入門編としてぜひおすすめしたい。 望洲楼 【所在地】愛知県半田市亀崎町3-71 【電話】0569-28-1136 【営業時間】11時30分~22時 ※要予約 【定休日】不定休 【駐車場】15台 ※「百年料亭」は百年料亭ネットワークの登録商標。百年料亭ネットワークは、古くからの日本料理を守り、また、それぞれの家風や仕来りを継承しながら、これからも地域の老舗として大いに飛躍する共に、お互いの交流や国内外からの誘客を促進し地方都市の活性化に資することを目的としている。