【社説】少数与党内閣 熟議の国会運営に努めよ
少数与党の第2次石破茂内閣が始動した。これまでのように、数の力に頼った政権運営はできない。国民の声に耳を澄まし、与野党で熟議と合意形成に努めてほしい。 きのう召集された特別国会で、石破氏が第103代首相に選出された。 衆院選で自民、公明両党の議席が過半数を割ったため、衆院の首相指名選挙は石破氏と立憲民主党の野田佳彦代表による決選投票となり、石破氏が多数票を得た。 30年ぶりの決選投票は前途多難を思わせる。 衆院では野党の賛成がないと、予算案や法案を通すことができない。野党がまとまって行動したり、与党議員の一部が造反したりすれば、内閣不信任決議案が可決される恐れがある。 少数与党の内閣は1994年の羽田孜内閣以来だ。羽田内閣は内閣不信任案を突き付けられると総辞職に追い込まれ、首相在任64日、戦後2番目の短命政権に終わった。少数与党が政権を安定させるのは容易でない。 石破首相は衆院選で躍進した国民民主党との政策協議を通じ、法案賛成を取り付けたい意向だ。国民民主が主張する「年収103万円の壁」の見直しについて、政策責任者が話し合いを始めている。 首相は国民民主のほか、立民、日本維新の会の党首とも会談し、政治改革や経済対策などへの協力を要請した。思惑通りに運ぶかどうかは首相や与党の対応次第だろう。 国会は様変わりする。衆院選前まで与党がほぼ独占していた常任委員長は与党10、野党7の配分となった。 立民は、予算案をはじめ国政全般を議論する予算委員会の委員長ポストを握った。政権追及の舞台を差配し、揺さぶりをかける構えだ。野党の質問に対し、閣僚が木で鼻をくくるような答弁はもう通用しまい。 政治改革特別委員会も立民が委員長席に座る。まず年内に予定される臨時国会で、自民派閥の裏金事件に象徴される「政治とカネ」の問題に決着をつけなくてはならない。 衆院選の民意に従い、与野党が取り組む最優先課題であることは言うまでもない。政策活動費の廃止などは実現する見通しだ。自民が後ろ向きな企業・団体献金の禁止に合意できるかが焦点となる。 立民には、国会運営への責任が重くなることを自覚してもらいたい。 2012年の第2次安倍晋三政権以降は「自民1強」が定着し、重要政策であっても国会論議を軽視する政権運営が繰り返された。 国会提出前の法案を自民の部会で議論し、了承を得る事前審査の慣例もこの際に見直したい。国会審議の空洞化、利益誘導の弊害が大きい。 与野党が伯仲し、国会の緊張感が高まることを奇貨として、賛否が割れる対決法案でも丁寧な議論を重ねて合意点を探るべきだ。
西日本新聞