あこがれが手に入る! 福岡市にできた「買える化石博物館」
下校時間になると、ランドセルを背負った児童たちが次々に立ち寄る。「新しい化石が入っていないかなぁ」。毎日のように通っているという小学4年の男児はお小遣いで、古代の小さなサメの歯を買ったことがあるという。「もっとお金があれば、メガロドンという名前の大きなサメの歯を買いたいな」
店の2階には、人気の肉食恐竜・ティラノサウルスやトリケラトプスの大きな頭部骨格のレプリカが並ぶ。レプリカは、注文を受けてからドイツの職人に製作を依頼し、引き渡しまでに3か月ほどかかるそうだ。
幼い頃の夢がかなう!
評判の背景には「本物にこだわること」があるようだ。ネットでの購入に不安を感じる人も多い化石の世界。店ではアメリカの発掘者と直接やりとりし、信頼できる海外のディーラーを通して仕入れる。ネットでは販売せず、値段も店を訪れた人に店頭で伝えて、対応している。
開店から3か月が過ぎ、「意外なものが人気で驚きました」という。それは魚の化石。絶滅した恐竜や、ほかの爬虫(はちゅう)類とは違い、はるか昔から現在まで劇的な進化はないように見えるが、なじみのあるシルエットが逆に、時を超えた特別な魅力を放っているらしい。
化石に関心を示すのは、子ども、そして中高年と二つの層に分かれる傾向があるという。小学校低学年の頃に図鑑やテレビで見て想像を膨らませ、中学、高校と進むにつれて別のことに関心が移っていく。社会に出て年齢を重ねていくと、遠い日のあこがれがよみがえる。
「これ1万円で買えるんだ」――。金銭的にも多少の余裕が生じ、手が届くものも出てくるというわけだ。目の前に並ぶ化石の数々を真剣に見ている自分自身に気づき、「なるほど……その通りかも」と一人うなずいた。
読売新聞