2人で86歳。カズと大輔の超熟ホットラインがJ1昇格狙う横浜FCを変える!
18年前と同じ光景が、松井大輔の目の前に広がっていた。クラブハウスに足を踏み入れると、誰よりも早く到着していた永遠のヒーロー、三浦知良が練習へ向けて入念なマッサージを受けている。 「おっ、練習生が来たな」 周囲にいるチームメイトたちの表情を思わず緩ませる、軽妙なジョークも変わらない。松井もあうんの呼吸で「はい。一応、練習生です」と笑顔を浮かべながら返した。 異なるのはお互いが所属するチームがJ1の京都パープルサンガではなく、J2を戦う横浜FCということ。そして開幕前で32歳と18歳だった年齢が、それぞれ50歳と36歳になっていることだ。 ポーランドリーグ2部オドラ・オポーレから、完全移籍での加入が発表されてから2日。前日の入団会見をへて、24日から横浜市内で再開された全体練習を終えた松井は、苦笑いしながら「非常に長いですね」と2時間半に及んだメニューを振り返った。 「いきなりゲームだったので、ちょっと驚きましたけど。まあ、徐々に入れたのでよかったかな」 1週間にわたるベトナムでの第1次キャンプから前日に帰国したチームは、すでにいい状態で仕上がっている。室内でフィジカルトレーニングを1時間、人工芝のピッチに出てハーフコートでの9対9など、ボールを使ったメニューが1時間半も続けられた。 そして、すべてを元気よく消化していたのが、プロになって33度目のシーズンに挑むカズだった。恒例のグアムでの過酷な自主トレを昨年末から2度実施。万全の状態でベトナムキャンプを終え、横浜での初練習で松井と再会した。 J1の上位を争っていたジュビロ磐田から、松井は昨年8月にオドラ・オポーレへ移籍した。オファーを受けた段階で「無謀と言われるかもしれないけど、挑戦することと挫折することは自分の財産になる」と36歳で海外へ再移籍することを決断。そのまま引退する覚悟で海を渡った。 もっとも、チーム事情もあって思うように出場機会を得られない。迎えた今冬の移籍市場で届いたのが、最終節を残してJ1昇格プレーオフ進出を絶たれた昨シーズンの悔しさを糧に、12年ぶりのJ1昇格を目指す横浜FCからのオファーだった。 他のJクラブからのオファーだったら、帰国を決断しなかったかもしれない。しかし、横浜FCにはカズがいた。2人の軌跡が同じチームで交わったのは2000シーズンのサンガだけだが、松井ははるか前からカズへ憧憬の思いを抱いていた。 「僕が小学校6年のときにちょうどJリーグが始まって、カズさんがヴェルディ川崎で得点を重ねて、MVPを獲得している。みんなの憧れの選手でしたよね。一番印象に残っているのが、やっぱり赤いあれですけど」