665馬力のアストンマーティン新型「ヴァンテージ」は何がスゴい?「真のドライバーのために」開発された“超高性能スポーツカー”の進化と真価
155馬力ものパワーアップで最高速度は325km/hに
かつては“ベイビー・アストン”とも呼ばれていたアストンマーティン「ヴァンテージ」ですが、もはや単なるエントリーモデルではないといっていいでしょう。 【画像】「えっ!…」これが“真のドライバーのために開発された”アストンマーティン新型「ヴァンテージ」です(73枚) GT3やGT4カテゴリーでのグローバルなレース活動や、F1ペースカーへの採用によって、ブランドのスポーツ性を最も強くアピールするのが今の「ヴァンテージ」の役割です。
2017年11月の現行モデル発表から約6年を経て登場した新しい「ヴァンテージ」は、まさにその個性を一層強固なものにするべく大幅な進化を遂げました。その試乗の舞台となったのは、スペインはセビリア。筆者(島下泰久)も一般道、そしてクローズドコースで、1日たっぷり試乗してきました。 まず驚かされるのが、そのパフォーマンスの飛躍的な向上ぶりです。4リッターV型8気筒ツインターボエンジンのスペックは最高出力665ps、最大トルク800Nmと、従来よりも実に155ps、115Nmもの大幅な増強。これはカムプロファイルの変更、大型ターボチャージャーの採用などによって実現されています。 この出力を、リアアクスル側に積まれるギアボックスに伝達するCFRP製プロペラシャフトはさらに軽量・高剛性化。8速ATも変速スピードをさらに高速化、最終減速比もローギアード化といった具合に、手が入っていない部分はないといっても過言ではありません。 結果として、最高速度325km/h、0-100km/h加速3.5秒をマークしますが、開発陣はそうした数値を重視はしなかったといいます。彼らが大事にしたのは、実際のドライビングパフォーマンスだというわけです。 実際、この大幅に向上したアウトプットを路面に余さず伝えるべく、オールアルミ製のボディそしてシャシーには徹底的に手が入れられています。 フロントのボディクロスメンバー、エンジンクロスブレース、前後アンダートレイなどの見直しは、特にサスペンションの取りつけ剛性アップに貢献するもの。それを土台に、6軸のセンサーと従来比500%増しの帯域幅を持つ新しい電子制御ダンパーや、新設計のスプリング、アンチロールバー、ブッシュ類を採用し、さらには“E-デフ(電子制御LSD)”やESPの制御も完全に見直されています。 さらに、タイヤ&ホイールは前後ともに21インチ。大径ローターを使ったブレーキシステムはブースターの制御が再チューンされるなど、こちらも従来のままの部分はほとんどないといっても過言ありません。 ●内外装のクオリティが一段レベルアップ 新型「ヴァンテージ」はそんな中身だけでなく、外観も大きく変わりましたから、まずはそちらに目がいったという人も少なくないでしょう。 特にフロントマスクは、新デザインのヘッドライトを始め開口部の大きくなったラジエーターグリル、30mmワイドになったフェンダーなどによって印象を全く違ったものにしています。ややおとなしめだった雰囲気が、俄然ワイルドになったといっていいでしょうか。 実はこのグリル面積の拡大は、パワーアップに伴う冷却性能向上が主眼。単なる意匠ではなく、あくまで機能重視なのです。 ヘッドライト形状もあってか、2008年に発表された限定車「One-77」を思い起こさせましたが、実際にデザインには、そこからのインスピレーションが込められていたのだそうです。力強さを増した雰囲気は、「ヴァンテージ」の目指すキャラクターに、よく合っているように思います。 インテリアもガラリと雰囲気が変わりました。「DBX」、「DB12」などと同じように大型タッチスクリーンを使い、スイッチ類をセンター付近に集約したダッシュボードは見るからに洗練されていて、気分を昂らせます。クオリティも文句なし。実際のところ、内外装の品質感はここへ来てレベルが一段上がった……そんな印象も受けたのでした。