コロナ禍、ネットゲームにはまり繰り返した課金。仕送りを絞られた息子は借金を重ねた。母は無心されても拒否を貫いた。「尻拭いせねば」の親心は間違い。鍵握る「底打ち」からの改心
14~20日は、ギャンブル等依存症問題啓発週間。米大リーグ大谷翔平選手の元通訳の違法賭博問題で、精神疾患の一種である同依存症への関心が高まる。「全国ギャンブル依存症家族の会鹿児島」は12日、霧島市でセミナーを開き、当事者や家族が思いを語った。 【写真】〈関連〉鹿児島県内にある当事者・家族友人の自助グループを一覧表で確認する
「家族は当事者を手放して」。県内に住む当事者の男性(32)は語り掛けた。22歳の時、初めてで大勝ちしパチンコにはまる。結婚して25歳で病院の依存症外来にかかるが、「最後に一発当てる」と休日出勤などとうそをついて店に通い続けた。 依存症には「底つき」と呼ばれるタイミングがある。生活が破綻し、身動きが取れなくなる状態だ。そこが回復への好機にもなる。 男性の底つきは2020年。ほぼ毎日のパチンコ店通いで、隠していた借金が250万円に膨らんだ。「妻に何て言えばいいのか。どうしていいか分からなくなった」 同会の存在を知り、依存症から回復した当事者と交流を始めた。「心が楽になり、孤独から解放された。踏み出す勇気が湧いた」。1カ月後、妻に借金を告白し治療を再開する。 現在は回復を目指す仲間を支援する。「借金がなくなれば再び始める人もいる。大事なのは本当にやめたいという意志。思いに応える仲間は必ずいる」と語った。
◇◆◇ 「立ち直らせようという気持ちが、自分も息子も苦しめた」。佐賀県に住む女性(54)が県外の大学に進んだ息子の異変に気付いたのは21年の夏だった。コロナ禍で大学に通えない中、ネットゲームにはまり課金を繰り返していた。 最初は厳しく管理した。まとまった金を送らないようにし、買い物のレシートの写真をLINEで送らせるなどしたが、効果はなかった。 息子はどうなってしまうのか。参加した家族の会で「親が尻拭いしなければ」との考えが間違いと知る。まず家族が対応を変えなくてはと、生活費以外の支援を断った。息子は友人や消費者金融から借金を重ね、突然帰省して金を無心したり、脅迫めいたメッセージを送ってきたりした。不安は募ったが、同じ経験をした会の仲間に励まされた。 「助けて」。1年前、息子は打ち明けた。自ら大学を休学し、山梨の回復施設に入った。 「家族は当事者を救えない」。共倒れにならないよう突き放し、本人が変わる意志を持つまで待つ。愛する子の底つきまで耐えるつらさを経験したからこそ、「同じ境遇の人を救えたら」と願う。