新型ロードスターのハンドルを握れば違いに驚く!!! マツダの地道な努力に迫る
マツダの新しい「ロードスター」に大谷達也が試乗した。進化のポイントに迫る! 【写真を見る】新型ロードスターの内外装を徹底チェック!!!(49枚)復活したVセレクションにも注目した!!!
アシンメトリックLSDの威力
「これは絶対に足まわりにも手が入っている」 新型ロードスターをワインディングロードで走らせながら、私はそう確信していた。 なにしろ、荒れた路面でもクルマの姿勢が安定しているため、タイヤが路面を捉える力(=グリップ力)もコンスタントで、従来型より安心感が格段に強い。おかげで、スポーツドライビングの基本である“タイヤと会話しながら運転する”ことが可能で、深い満足感を味わいながらコーナーを駆け抜けられた。 しかし、マツダの技術陣によれば「サスペンションとタイヤは従来型とまったくおなじ」とのこと。私はキツネにつままれたような気分になりながらも、技術陣の説明に耳を傾けることにした。 新型の最大の特徴は、加速時および減速時で特性が異なる「アシンメトリックLSD」を採用した点にある。 まぁ、ディファレンシャルギアとかLSD(リミテッドスリップデフ)の仕組みは実にわかりにくいので、ここではその概要をさらっと説明すると、LSDの役割は、左右の駆動輪をより強く結びつけることでクルマが直進する傾向を強め、姿勢を安定させるのに役立てていると考えていただければいい。そして新開発のアシンメトリックLSDは、減速時のほうが加速時よりも左右の駆動輪を強く結びつけて安定性を増すことに、最大の特徴がある。 ロードスターの最大の売りは、ヒラヒラとして軽快なハンドリングにある。これを実現するため、ロードスターはコンパクトなボディとするとともに、エンジンもできるだけ小排気量として軽量化を実現。ここに、スポーツカーとしては比較的ソフトなサスペンションを組み合わせることで、前述したヒラヒラとして軽快なハンドリングを生み出してきたのである。 しかし、ソフトなサスペンションはボディの姿勢変化を招きやすい。具体的にいえば、ブレーキングすればボディが前のめりになるし、加速すれば後下がりになる。コーナリング中だってボディは左右に傾くし、路面が荒れていればそれによって大きくボディは揺さぶられる。そしてボディが揺さぶられればタイヤを路面に押しつける力が変化して、グリップ力も一定しない。つまり、スポーツカーが硬めのサスペンションを採用しているのは、グリップ力の変化を防ぐためといっても過言ではないのだ。 けれども、ロードスターはサスペンションをソフトにすることでヒラヒラ感を演出してきた。だから、加減速中や荒れた路面ではタイヤのグリップが安定せず、タイヤの能力を完全に引き出すのが難しかった。この点に、ジレンマというかストレスを感じるロードスターオーナーは少なくなかったはずだ。 そこでマツダが採用したのが、前述のアシンメトリックLSDだった。これなら、サスペンションを硬めず、言い換えればロードスターのヒラヒラ感をそのままに、安定性を高められる。しかも、スポーツドライビングでもっともクルマの姿勢が不安定になりやすいのはコーナーに向けてブレーキングするときだが、アシンメトリックLSDは、減速時に左右の駆動輪の結びつきをより強めることでブレーキングの際の姿勢を安定させ、タイヤからコンスタントなグリップを引き出すことに成功した。