「買うのは決まっている。何本買うか、だ」伝説の美少女ゲーム『同級生2』リメイクでファン沸騰
「’90年代美少女ゲーム」というジャンルがある。 同時代の『ドラゴンクエスト』のようなロールプレイングゲームや『ストリートファイターシリーズ』に代表される対戦格闘ゲームのように度々話題に挙がる、というものではないが、当時のカルチャーを席巻したジャンルのひとつである。その「’90年代美少女ゲーム文化」が現在、かつてないほどの盛り上がりを見せているという。レトロゲーム文化の最前線であるショップ『BEEP秋葉原店』のプロデューサーを務めるRF丸山氏に聞いた。 【画像】な、懐かしい……! 伝説の美女ゲー「同級生」質感のあるアレ ――’90年代美少女ゲーム界隈に何か動きがあったのでしょうか。 「権利関係が複雑だったのですが、ここにきて整理されてきたのが大きいようです。’90~’00年代の美少女ゲームの開発会社を舞台にした地上波アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』が昨年末から今年の頭まで放送され、『同級生2』(エルフ)を原作としたリメイク作『同級生2リメイク』(FG REMAKE)が2月に予約開始、6月に発売される、という大きな動きが重なって、熱が生まれていますね。私の周りでも『ショップやサイトによって異なる購入特典のどれを選ぶか』『買うのは決まってる。問題は何本買うのか、だ』などと盛り上がっていますよ(笑)」 ――その魅力とはいったい? 「『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』では、時代の節目節目にあった名作たちが取り上げられていました。美少女ゲームのレガシーとも言うべき作品が愛情を持って紹介され、若い人たちに認知された。数ある名作の中でも『同級生2』は当時を象徴するゲームのひとつと言えます」 ――『同級生2』は何がすごかったのでしょうか。 「1作目にあたる『同級生』が1992年にエルフから18禁のPCゲームとして発売され、今見ても美麗なグラフィックと画面構成、主人公の長期休みに街や学校を歩き回り、同級生や先生らと街で出会い、恋心を育てていくというゲーム性、最後の告白の緊張感などが受けて大ヒットしました。私も直撃世代で、このゲームのためだけに、金額は覚えていませんが、当時の私にとってはすごい大金、おそらく10万円は超えるお金を払って200メガバイトのHDDを買いました(笑)。 1作目のヒットを受け、3年という時間をかけて世に出たのが2です。登場する美少女キャラも増え、妹キャラ、母親的な女性など、攻略対象の幅も広がり、当時たくさんあったPC系のゲーム雑誌は『同級生2』の記事一色になりました。当時、ゲームキャラが着る制服はセーラー服かブレザーがほとんどだったのですが、『同級生2』に出てくる制服はタータンチェックを基調とした可愛らしい、オリジナルのデザイン。これが大人気になり、以後のゲームの多くに趣向を凝らしたデザインのオリジナル制服が設定されました。この“文化”が導入される嚆矢(こうし)になったと思います。 また、このシリーズは18禁ではない家庭用ゲーム版が販売されています。とくに2はスーパーファミコンやプレイステーションといった一般にも出回ったメジャーゲーム機からも発売されていますので、他の美少女ゲームに比べて知名度は高いでしょう。1作目はすでにリメイクされ、かなり売れています。この4月に1作目の家庭用版が発売されているので、2が出るのは必然といえますが、それだけに『待ってました』という想いはユーザーの間で強いものだと感じます」 ――若いユーザーの心も捉えているでしょうか。 「まだまだ“往時を知る人が懐かしむため”もしくは“あの頃のゲームが今のPCやタブレットなどでできるなら”という人が多いですね。ただ、着実に若い層にも興味を持つ人が増えています。美少女ゲームブーム当時のゲームで、現在のPCでも遊べる移植版は結構ありますし、リメイク作品もいくつかあります。ソーシャルゲームで話題になっている『Fate』シリーズや『マブラヴ』シリーズも、『対魔忍』シリーズなども、もとは美少女ゲームですし、そこから美少女ゲーム文化を知った若いユーザーも多い。移植作やリメイク作でなく、当時のゲームを当時のPCでプレイする、という人もかなりいますね」 ――40年近く前のPCが、令和の現在に動く? 「はい。例えば、ウチでは当時のPCを修理して販売しています。やはり〝当時物がいちばん〟という人は、相当数いらっしゃるんです。当時物、とくにNECのPC-9801VMなどは、ビジネスシーンでも使われていましたから、愛着をもっていらっしゃる方が多くいます。 モノとしての存在感もあります。当時のゲームはパッケージの絵もデザインも美麗で、箱絵を見ただけで、世界観が伝わってくるような素晴らしいものが多く、所有感がすごいのです。コレクターにとって、当時を懐かしむことのできる、たまらない存在になっていると思います。お高いのでは、と思われがちですが、5~6万円あれば始められます。ゲームソフトも、タイミングによりますが『同級生2』のように多数販売されたものでしたら、500円程度から買えます。スペシャルディスクつきでも1500円とかで入手可能ですよ。 また、当時のゲーム雑誌、攻略本も奥が深い。当時の美少女ゲーム攻略本は、開発日誌や開発者の紹介なども載っていて、熱と夢のある空気感が伝わってくる。原画、設定資料集なども多数あるうえ、クリエイターのコメントも読めて、とても凝っている。今見ても面白いんですよ。始めると、相当ハマれる趣味になると思います。箱も大きくて、ノスタルジーを刺激されます。実物、モノがそこにあるというのは、デジタル化時代では失われつつある、所有欲を満たしてくれる感覚ですよね。秋葉原の当店舗には、たくさんの実機があり、当時のパッケージでゲームを飾っております。CDや雑誌、当時のグッズなどさまざまな品が並んでおりますので、お近くに寄る際は、見るだけでも楽しいのでぜひ」 令和の世に現れた、当時を語る作品から、青春時代への扉を開いたり、また当時を知らない世代でも、今とは違う熱さをもった、その時代のカルチャーに触れてみて、新しい趣味としてみるのはいかがだろうか。 写真・文:来栖美憂 くるす・みゆう フリーライター。人文、社会問題、サブカルチャーなどを主な守備範囲とし、雑誌・新聞・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数 取材協力:BEEP秋葉原店 千代田区外神田3-9-8中栄ビルB1 03・6206・9116 URL:www.akihabara-beep.com X ID:@BEEP_akihabara
FRIDAYデジタル