【連載】言の葉クローバー/木村カエラ おまじないのような『コジコジ』の言葉
心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回は木村カエラが愛してやまない漫画家・さくらももこさんの作品について語ってもらいました。
----------------------------------- コジコジだよ コジコジは生まれた時からずーっと 書籍『COJI COJI FAN BOOK コジコジのすべて』 -----------------------------------
昔からさくらももこさんが大好きで、自分にとって大事な言葉といえば『コジコジ』だと思って。これは『コジコジ』の中でもよく知られているセリフで、しかも第1巻の第1話で出てくるんです。学校の先生に「将来は何になりたいの?」と聞かれた時のコジコジの答えがこれなんです。インタビューで話したことと繋がるんですけど、つねに私は不安があるし、自分が揺らいでしまうことがある人で。だからこのコジコジの言葉は自分にとって、おまじないみたいなものなんです。「カエラはカエラだよ。生まれた時から死ぬ時までカエラはカエラだよ」って自分のことを思えるというか。だからこのコジコジの言葉が今でもすごく大好きで、自分が悩んだり落ち込んだ時は、この言葉を読んで自分を立て直すようにしています。 『ちびまる子ちゃん』もそうだけど、さくらももこさんの作品に出てくる登場人物は、日々の悩みに対してあっけらかんとした答えを返すんです。「命に関わることじゃなければ大した問題じゃないだろ」みたいな。そういうセリフがさくらももこさんの作品にはたくさん溢れてて、いつも助けられてます。 子供の頃に『ちびまる子ちゃん』と出会って以来、さくらももこさんのことが好きになって。エッセイも読んだし、他の作品も網羅したし。私にとってそういう大切な存在だったので、私が『ねむとココロ』という絵本を出した時、帯のコメントに「カエラちゃんからの優しい贈り物です。」と言葉をいただいたんですけど、おそらくその頃さくら先生は癌で闘病してて、亡くなる寸前に書いてくれたコメントなんです。その言葉がすごく嬉しかったのと、そんな言葉をさくら先生が私に残してくれたことで、私自身、ちゃんと自分の優しさを人にあげられるように生きたいと思ってます。 そういえばコジコジはメルヘンの国の住人っていう設定で、出てくるキャラクターも鳥だったり太陽だったり雪だるまだったり、とにかくファンタジーの世界のお話なんです。気づいたら「F(U)NTASY」と繋がってる(笑)。それぐらい自分にとって大事な作品なのかもしれないです。 『COJI COJI FAN BOOK コジコジのすべて』 『コジコジ』はさくらももこによる漫画。『きみとぼく』(ソニー・マガジンズ)にて1994年から1997年まで連載され、その後『富士山』(新潮社)、『りぼん』(集英社)、幻冬舎コミックスの書き下ろし4巻の全38話にて発表された。『COJI COJI FAN BOOK コジコジのすべて』は、〈コジコジ万博〉(2022年4月23日から7月10日まで開催)の展覧会図録としてまとめられたファンブック。