『トクメイ!』ついに脅迫者Xの正体が明らかに X、上層部、強行犯係の関係性を考察
情報提供者の死は、警察と万町署を揺るがす事態へと発展した。『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ・フジテレビ系)第9話では、ついに脅迫者Xの正体が明らかになった。 【写真】橋本環奈の表情に驚く徳重聡と前田拳太郎 湯川(沢村一樹)が懇意にしているクレープ屋の片桐(米本学仁)が殺された。第一発見者の湯川は容疑者として取り調べを受け、湯川班は捜査を外される。万町署を訪れた榊山官房長(福井晶一)は円(橋本環奈)たちに、万町署が統廃合によってなくなると告げた。特命を拒否した万町署に対する本庁の制裁であることは明らかだった。 目下の課題は片桐の事件に加えて、署内でこつぜんと消えた1億円の行方を探すこと。片桐が殺されたのは脅迫者Xの正体をつかんだ直後であり、残された湯川班の面々は独自に捜査を開始する。円は警察を辞めた須賀(佐藤二朗)から、新聞記者の芹沢詩織(石井杏奈)が追及した小田切衆議院議員(堀川りょう)と榊山の不正の証拠を探すように助言される。その矢先に小田切が体調不良を理由に議員を辞職するというニュースが入る。停職中で行方をくらました湯川は独自に小田切と接触していた。Xの正体を尋ねる湯川に小田切は知らないと答え、小田切自身も榊山の手の内で踊らされていると語った。 錯綜する事件の真相と真犯人の正体に情報処理が追い付かないが整理してみたい。芹沢が殺されたのは小田切と警察上層部の疑惑を追及していたからで、脅迫者Xは小田切とつながりのある人間をターゲットにしていた。湯川の推理では芹沢の死にXが関わっている。また、Xの正体をつかんだ片桐は帰らぬ人となった。本庁の黒幕は榊山で、特命を利用して所轄を支配し、警察組織を掌握した。こうして考えると、Xと警察上層部は鋭く対立している。一方で、Xも警察上層部も自らの正体や不正の証拠を隠そうとして、近づいてくる人間を周到に排除してきた。 湯川班と特命を帯びた円が巻き込まれることになったが、湯川や円は榊山と脅迫者Xの解明で、Xとは消えた1億円をめぐってつながっている。本庁とXの抗争に際して湯川と円はアウトサイダーの位置にいる。本作のわかりづらさはこの点に起因すると思われるが、1億円を持ち去った犯人がXとされたことで複雑な相関図に補助線が引かれ、円たちを当事者として2つの事件に関与させることになった。 雲をつかむようなXの正体は意外なところから発覚する。防犯カメラで物を詰め込んでパンパンになった着ぐるみを見た円は中に入っているのが札束だと気付いて、窃盗犯係の真壁純也(安藤嗣海)が犯人として疑われる。真壁は自身がXであると認めた。たしかにさゆり(松本まりか)から防犯カメラの映像データを見せるよう言われても、のらりくらりと回答を保留していたので思い当たる節はある。 しかし、どこか釈然としない。真壁一人に責任を押し付けるには問題が大きすぎるのだ。参事官の西尾(隈部洋平)のデータから、不起訴になった事件の押収品を着服するなど組織的に不正が行われていたことが示唆されており、「Xは僕だけじゃない」という真壁の供述の真意が気になるところだ。 経費削減から雪だるま式に話題が広がる『トクメイ!』の第9話で、湯川班の週替わりヒーローは月村(前田拳太郎)だった。円とクレープ屋の店員・美和(前野えま)の会話を聞いて「被害者のため捜査がしたい」と熱く訴える若手刑事ぶりがまぶしく、青臭い正義が刑事ドラマに欠かせないことを実感した。
石河コウヘイ