ソフトバンク小久保監督「優勝に値するチームか自問自答した」…選手支える周囲もベスト尽くす集団に変貌
打線の中心である柳田に近藤、抑えを任せたオスナと松本裕――。何人も主力が戦列を離れながら、ソフトバンクは失速しなかった。「最悪、最低を想定」(小久保監督)した備えがあったからだ。 【表】ソフトバンクで今季出場機会をつかんだ選手
監督は試合前のフリー打撃で二塁手の守備位置に立ち、選手の動きに目をこらしていた。眼鏡にかなう若手がいれば抜てきし、育てながら勝つ道に挑んだ。
開幕前に支配下登録した川村と緒方は代走や守備固めを含めて80試合以上で起用。5月末に柳田が負傷した際は、球団と話し合って翌日に外野手の佐藤直を育成選手から引き上げた。6月下旬から一軍に定着した3年目の正木は、勝負強い打撃を見せて近藤の離脱後は5番も任せた。捕手の海野も先発出場を増やし、甲斐の負担を減らした。
小久保監督はファーム日本選手権を制した昨季まで二軍を率いており、若手をよく知る。さらに、送り出す側の松山二軍監督は、「(一軍では)選手に合わせ、成績を残しやすい状況で使ってくれた」と言う。打者であれば、得意なタイプの投手の時に出番を与えるなど周到な配慮があった。
指揮官が目とともに大事にしたのが耳だ。リーグ優勝を決めてビールかけを楽しんだ後、「本当にコーチが頑張って、(自分が)決断するための材料を出してくれた。理想的な環境だった」と感謝した。
昨年10月の就任記者会見で「監督と選手が近くなりすぎるとコーチの存在が死んでしまう。それだけは、絶対にしない」と宣言。選手に直接指導することは控え、コーチに任せた。月に1度は食事会を開催。異なる立場の意見にじっくりと耳を傾け、決断に必要な情報を蓄積した。打撃投手ら裏方とも飲みながら語り合う場を設け、あるスタッフは「チームの一員だと思わせてくれるし、勝ちたいという気持ちになった」と話す。
「優勝するに値するチームかどうか、自問自答していた」と小久保監督は振り返る。勝つために、選手だけではなく支える周囲もそれぞれの持ち場でベストを尽くす。そんな集団に変貌を遂げた今季のソフトバンクは、ペナントをつかむにふさわしかった。(記録は優勝が決まった23日現在)