井上、ガードの上からふっ飛ばす異次元KO!
WBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(22、大橋)が29日、有明コロシアムで行われた同級1位のワルリト・パレナス(32、フィリピン)との初防衛戦に2回1分20秒TKOで成功した。1年ぶりとなるリングで勝負を決めたのは、ガードの上から効かせるという衝撃波パンチだった。2016年は、いよいよメイドインジャパンの怪物が米国・ラスベガスのリングに登場することになりそうだ。
それは軽量級の歴史を塗り替えるようなKOシーンだった。 第2ラウンド。高く掲げられたパレナスの壁のようなガードの上から一発、一発に力を込めた高速の左フックと右フックを続けさまに叩きこむと、最強挑戦者は棒立ちになった。すると今度は、右ストレート。これもパレナスのグローブの上から打った。なのに挑戦者は、体ごとロープに吹っ飛ぶ。両膝をついてダウン。かろうじて立ち上がったが、もう目はうつろ、足はよろけてしまっていた。おそらくパンチが強烈すぎて、ガードの上からでも、それが衝撃波となって脳に達したのだ。 井上は「勢いに任せてやっちゃった」と、ニュートラルコーナーで右手をぐるぐる回すフィニッシュのパフォーマンス。立ってくるのを見定めると、再び襲いかかる。左フックから左ボディ。パレナスは悔しそうにグローブでキャンパスを叩き、ひざまづいた。レフェリーが、パレナスをだき抱えて試合をストップ。1年ぶりの復帰戦で、井上は、またしても怪物ぶりをアピールした。 「ガードの上からだろ? 軽量級でこんなの見たことがないね」 大橋秀行会長を驚愕させた。 ミドル級やヘビー級では、ガードの上からパンチを浴びせたKOシーンもあるが、軽量級では異例中の異例。控え室で氷嚢を頭に載せていたパレナスは、「スピードが速すぎてパンチが見えなかった」と、若きチャンピオンに敬意を表した。逆輸入ボクサーとして日本のリングを本拠地にしていたこともある高いKO率を誇る挑戦者は、中盤勝負を考えていたが、井上のポテンシャルは想像を絶するものだった。 「その前の左のパンチが効いていた。ガードの上からでも効いたと思った。最後はどのパンチでしたか? こんなこと初めてだけど覚えていない」。 衝撃のフィニッシュブローのひとつ前、離れ際に左フックをヒットさせていた。そのダメージが布石になっていた。右がほぼ使えなかった8か月間。ひたすら磨いた左。それが井上尚弥が背負った1年のブランクを成長に変えた証だった。