サッカー選手から一転「僧侶」へ 「絶対ならない」と思いつつ、なぜ仏門へ入ったのか
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
江戸時代、「越すに越されぬ大井川」と詠まれた大井川が流れる静岡県島田市。街の中心部、旧東海道の近くに「林入寺」という曹洞宗のお寺があります。 今年(2023年)、このお寺の副住職となったのが、五藤晴貴さん・28歳。元はプロサッカー選手で、梅村晴貴の名前で活躍していました。 五藤さんは高校1年のとき、ジュビロ磐田のユースチームで頭角を現し、高校卒業後は当時J2のカターレ富山に入団。ボランチとしてプロの道を歩み始めました。しかしその矢先、雨が降りしきるなかで行われた試合で、スライディングを決め右手をついた瞬間、肩に強烈な痛みが走ります。右肩の脱臼でした。 必死のリハビリを半年間続け、チームに復帰した2年目。今度は試合中に左ひざの前十字じん帯を断裂。8ヵ月の離脱を余儀なくされました。 「次こそは……」と取り組んだ3年目には、また試合中に左足の半月板を損傷。またまた手術とリハビリで、半年にわたってチームを離れざるを得ませんでした。
たまにスマートフォンをのぞけば、ニュースサイトでチームの活躍が伝えられる一方、SNSには「梅村はケガばかりで出てこない」と、心ないコメントも並びました。 「チームのみんなも頑張っているし、SNSで叩かれるということは、サポーターの皆さんに気にしてもらえているんだ。いまはリハビリを頑張ろう!」 五藤さんは入院・手術・リハビリを繰り返すたび、心を奮い立たせて頑張ってきました。しかし、フルシーズンでチームに参加できた4年目、契約満了で富山を離れます。心機一転、JFLのFCマルヤス岡崎に移籍した5年目でしたが、思うような結果を残せません。あれほど好きだったサッカーの練習をサボってしまう日が出てきて、ハッとしました。 「こんなことをしているようでは、もうプロとしてお金をもらう資格はない」 2018年秋、五藤さんは23歳でユニフォームを脱ぐ決断をしました。