『光る君へ』吉高由里子のヒロイン力が全開! まひろ×三郎の運命が動き出す
『光る君へ』(NHK総合)第2回「めぐりあい」。まひろ(吉高由里子)が母を失ってから6年の月日が流れた。まひろは成人の儀式を迎える。父・藤原為時(岸谷五朗)との関係は冷め切っているが、まひろは代筆仕事に生きがいを感じている。 【写真】破天荒キャラクターとしてはまり役に 足の指で扇子を掴む師貞親王(本郷奏多) 主演の吉高由里子は、成人したとはいえ、まだ幼さの残るまひろの豊かな感情を演じていた。まず印象的なのは、まひろの素直な感情だ。特に、喜びや楽しさといった感情はまっすぐに伝わってくる。 まひろは漢詩や和歌、物語が好きで、色々な人の気持ちになって歌や文を書く代筆の仕事に楽しさを感じている。吉高はさまざまな表情でまひろのいきいきとした感情を見せてくれた。たとえば、成人の儀式を迎えた夜にまひろは1人筆をとる。目の前の文章に没頭する真剣な面持ちから、まひろが好きなものへの熱意が伝わってくる。 絵師(三遊亭小遊三)のもとで代筆にいそしむまひろはいい歌や文が思いつくとパッと明るい笑顔になる。まひろが創作に楽しさを感じているのがわかる場面だ。依頼主から「なんと見事な……」と感心されたり、「ありがとうございます」とお礼を言われたりする度、まひろは満足げだ。嬉しそうににやける顔から、自分の文才に自信を芽生えさせていることがうかがえる。とはいえ、ある時、代筆した歌を相手から突き返されるという事態が起きた。そのことに気持ちが晴れず、拗ねる姿はまだまだ子どもっぽい。 まひろはひょんなことから三郎/藤原道長(柄本佑)と再会する。まひろは6年前の出来事を思い出したくないからと、三郎との約束を守れなかった理由を話さない。その一方で、三郎とのとりとめもないやりとりをするまひろは楽しそうだ。まひろは「三郎こそ誰なの? 偉くなりたい人?」と無邪気に問いかけると、「三郎は名前しか書けないから偉くはなれないか」と続けてコロコロと笑った。幼い頃のまひろ(落井実結子)と同じく、純粋無垢な笑顔に、三郎との思いがけない再会を嬉しく思う気持ちがあらわれているように感じた。自分の周りにいる女子は皆さみしがっていると打ち明けた三郎にとって、まひろの清々しい笑い姿は印象に残ったことだろう。 吉高の演技が魅力的に映るのは、喜びや楽しさといった感情を表す場面ばかりではない。物語冒頭、まひろは父・為時の同僚・藤原宣孝(佐々木蔵之介)から「父上の気持ちも少しは分かってやらぬか」と諭され、「分かりませぬ」と唇を尖らせる。宣孝から釘を刺された後、ぽつねんとしていたまひろはもう1度「分かりませぬ」と呟く。前者では父や年長者である宣孝への反発心が感じられたが、後者で見せた横顔は暗い面持ちで、母を失った悲しみは癒えていないのだとわかる。まひろは、父が母の死因を隠したことに釈然としない思いを抱え続けている。 まひろが代筆の仕事をしていることを下女のいと(信川清順)が為時に話してしまった。烈火のごとく怒る為時にぐっとこらえるような面持ちを浮かべながらも、まひろは正直な気持ちを隠すことなく打ち明ける。 「代筆仕事は私が私でいられる場所なのです。この家では死んでいるのに、あそこでは生きていられる。いろんな人の気持ちになって歌を詠んだりする時だけ6年前の出来事を忘れられるのです」 為時に負けず劣らず、強い語気で歯向かう様子や「父上の言うことなぞ、私は聞かない!」とそっぽを向く姿には子どもっぽさもあるが、まひろの意志の強さを表すものでもある。 第2回で、まひろがさまざまな感情を見せる中、三郎に特別な感情を抱いているのを自覚し始めるような描写もまた印象的だ。まひろは代筆の依頼主が字を書けないことを偽っていることを知った。「うそはいずれ、あらわになってしまうと思うが……」と助言するまひろの脳裏に浮かんだのは、川べりでの三郎とのやりとりだった。三郎の言葉を思い浮かべながらまひろは依頼主へと助言する。依頼主に対して真摯に向き合うまひろの言葉が、徐々にまひろ自身の心へと向いていくさまを、吉高は言葉の核心に気づき、戸惑うような表情を見せることで表していたように思う。 「歌は要らぬ」という三郎の言葉に、まひろは「まことの姿を見せろという意味だったのではないか?」と問いかける。「では、会えるまで通う」といった三郎を思い浮かべたまひろは胸に手を当てた。まひろは「幸運を祈っておる」と神妙な面持ちでうつむく。それは、再び三郎と会えますように、という自身の願いも込められているようだった。 物語の終わり、まひろは三郎と再会できたものの、盗人と間違われた三郎は役所へ連れて行かれる寸前である。めぐりあった2人にはこの先どのような運命が待ち受けているのだろうか。
片山香帆