名作ぞろいの平成ドラマ、最高傑作は? 本当に面白い作品(3)演技、脚本、すべてが完璧…時代を超える名作は?
「降る雪や 明治は遠くなりにけり」ー。俳人の中村草田男は、昭和6年にこの句を詠んだ。令和6年となる今年、改めて過去の時代を振り返るならば、さしずめ「ポケベルや 平成は遠くなりにけり」(字余り)といったところだろう。今回は、平成を代表するドラマ5本をセレクト。普遍的な面白さを誇るラインナップを紹介する。第3回。(文・司馬宙)
『池袋ウエストゲートパーク』(2000)
【作品内容】 池袋西口公園を拠点にダラダラとした日々を送っていた真島誠(マコト)は、森正弘(マサ)は、書店で出会った万引き少年・水野俊司(シュン)と出会い、3人でつるむようになる。 そんなある日、友人の中村理香(リカ)とラブホテルに向かったマコトは、女子高生殺害事件に遭遇。その後、リカにも犯人の魔の手が忍び寄る。 【注目ポイント】 『ケイゾク』の演出で成功を収めた堤幸彦は、その後、平成を代表するドラマのメイン演出で、一気にスターダムにのし上がる。石田衣良の同名小説を原作にした”伝説のドラマ”『池袋ウエストゲートパーク』(通称『I.W.G.P.』)だ。 本作が”伝説”と言われるのには、理由がある。1つは、スタッフ・キャストの豪華さだ。 本作には、堤をはじめ、後に日本のエンタメ界を支えることになる数多くの才能が集結している。まず、脚本を担当するのは、『あまちゃん』(2013、NHK総合)『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019)で今や日本を代表する脚本家になった宮藤官九郎。そして、音楽は、KICK THE CAN CREWでメジャーデビューする直前のKREVAが担当している。 キャストも見逃せない。主人公マコト(真島誠)を筆頭に、タカシ(安藤崇)役の窪塚洋介、ドーベルマン山井(山井武士)役の坂口憲二、森正弘(マサ)役の佐藤隆太、斉藤富二夫(サル)役の妻夫木聡、森永和範役の高橋一生、浜口役の阿部サダヲと、主演級のメンツが名を連ねているのだ。また、池袋署の署長・横山は、映画『ラストサムライ』(2003)で米アカデミー賞にノミネートされ、再ブレイクを果たす前の渡辺謙が演じている。 そして、もう1つの理由は、主人公マコトのキャラクター造形だろう。マコトは、「めんどくせぇ!」が口癖にもかかわらず、持ち前の人の良さでさまざまなトラブルに首を突っ込み、たちどころに解決してしまう。そのキャラクターと生き様が、多くの平成男子たちにぶっ刺さったのだ。 加えて、ホームレス狩りやドラッグ、コギャル、ケータイといった「平成ネタ」を散りばめた脚本も、本作の大きな魅力だろう。『不適切にもほどがある!』(2024、TBS系)や『新宿野戦病院』(2024、フジテレビ系)など、特定の場所や時代の表象を通した社会問題の描写に定評がある宮藤。本作は、そんな彼の原点であり、最高傑作でもあるのだ。 なお、本作は、2023年にNetflixで配信を開始。再放送にもかかわらず、Netflixの人気作品ランキング日本トップ10(テレビ部門)で2週連続3位の人気を博した。平成を代表した本作には、時代を超えて通用する価値が詰まっているのかもしれない。 (文・司馬宙)
司馬宙