“モーニング”に明日はある? 9年ぶりに「喫茶店図鑑」完成/愛知
■万博、「モーニング博覧会」で定着 「生粋の名古屋人」を自称する永谷さんは、万博イヤーの2005年に『どえりゃ~!! 名古屋モーニング』と題したムック本を執筆。今回は同じ版元から9年ぶりに刊行された第2弾で、モーニングを看板に掲げる約40店舗をあらためて取材したほか、味噌カツやきしめん、あんかけスパなど定番の名古屋めし店を含む78店舗を取り上げた。 名古屋めしブームをきっかけにモーニングが「再発見」された一宮市では07年、地元の商工会議所青年部が「一宮モーニング博覧会(モー博)」を初開催。1万人近くが訪れ、17店舗で計1,800食のモーニングを完売。09年の3回目からは一宮モーニングのナンバーワン決定戦「モー1(ワン)グランプリ」も合わせて開くなど、「モーニングのまちづくり」を加速させた。永谷さん自身も「一宮モーニング推進委員会」のメンバーに招かれ、取材や評論を兼ねて、その奥深い世界のさらなる発掘と普及啓発に努めている。 「僕自身、小さいころから日曜の朝は家族で近所の喫茶店に行き、モーニングを食べるのが当たり前の習慣でした。ちょっと前まではパジャマで来る人がいるほど、自宅の延長という感覚。マスターやママと客の関係もディープで、まさに古き良き昭和の大衆文化の名残だと言えるでしょう」 ■消費増税が苦境に追い打ち 9年ぶりの取材では、ご飯ものを食べたいという客のリクエストにこたえて「オムライスモーニング」を始めたり、地産地消にこだわったりする店も発見しながら、モーニングを中心とした喫茶店文化が健在であることを確認した。しかし、その未来は決して明るくないという。 「08年のリーマン・ショックで近くの工場の客がパタっと来なくなり、看板を下ろした店や今もその影響が残るという店がいくつもあります。そして4月からの消費税増税。もともとモーニングは限られた材料で満足してもらおうというサービス精神で工夫され、見た目より原材料費はかかっていません。でもさすがに限界で、苦しい店には今度の増税が追い打ちをかけることになりそうです」 09年の総務省「経済センサス」によれば、都道府県別の喫茶店数で愛知県は、9,839店と、大阪府の10,902店に続き2位。しかし、喫茶店数は全国的に減少傾向で、愛知県とて例外ではない。特に大手チェーン店以外の店では、多くが苦境に立たされている。 こうしたタイミングで発行される「図鑑」。「特に東京の人や若い人に手にとってもらい、名古屋にモーニングを食べに来てほしい」と永谷さんは呼び掛けている。 (ジャーナリスト・関口威人)