ミツバチ「消失」でなぜ農作物が危ないの?/木暮太一のやさしいニュース解説
100種類近くの農作物が危機に
じつは、世界の農産物の1/3は養蜂家が育てたミツバチに授粉を頼っているのです。そのため専門家からは、「100種類近くの農作物が危機に瀕している」と人間の生活への“実害”を懸念する声も出ています。 ―――「そんなにミツバチの影響が大きいの?」 作物によりますが、中にはほとんどの生産をミツバチに頼っているものもあります。 受粉作業の大部分をミツバチに依存している農作物としては、りんごは(90%)、アスパラ(90%)などがあります。またアーモンドにいたっては100%をミツバチの“作業”に依存しているのです。つまり、ミツバチがいなくなったら、アーモンドは生産できない(少なくとも、別の形態で受粉作業を行わなければ育たない)ということになります。 その他にもナシ、アプリコット、メロン、ブロッコリ、ニンニク、タマネギ、ピーマン、トマト、コーヒーも、ハチの受粉に依存しています。これほど多くの農作物がハチを媒介にして育っているのです。 多くの人は実感しませんが、ミツバチから人間は非常に大きな恩恵を受けています。ミツバチがいなくなったとしたら、同じ作業をわたしたち人間が行わなければいけません。もしくは、ミツバチと同等の労働ができるロボットを発明しなければいけません。 これらが非常に困難で、コストが高く付くことは容易に想像できるでしょう。となれば、世界の食料生産量は減り、価格も高騰するでしょう。それは防がなければいけません。 原因究明を急ぐとともに、わたしたちも環境保全により強く意識を向けなければいけません。 ----- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。