士業専門コンサルタントが教える、プロ士業を「選ぶ」「育てる」ために知っておくべき士業の特性。(横須賀輝尚 経営者)
■士業とは、どんな存在なのか?
では、具体的に士業の選び方…に行く前に、士業という人種を知っておきましょう。士業は「活用」次第です。効果的な活用のためには、彼ら彼女らの性格や適性を知っておいた方がより大きな効果を求めることができます。業界的にはあーだこーだ言われてしまう内容だと思いますが、事実なのでこの際ハッキリしちゃいましょう。 (1)プライドの高さは超一級 まずあなたも士業に対するイメージがあるはずです。そして、それはおおよそ想像どおり。基本的にはプライドが高い。これは間違いありません。中には本当に低姿勢の士業もいますが、心の奥底にはプライドを必ず持っています。ですから、士業に対して「上から目線」「命令口調」、こういったものは大嫌いです。まあ、ビジネスマナー的にも普通に考えてNGですが、より過敏に反応する人種だと考えておくと良いでしょう。付け加えて言うと、褒めると報酬以上に働くことがあります。ですから、基本的には「褒めて伸ばす」「プライドをくすぐる」こういった対応方法が吉です。 (2)リスクを非常に恐れる 独立開業することに、そもそも資格は必須ではありません。世の中、資格など持たずに独立して事業を起こす人の方がむしろ多数。では、なぜ士業という人種は資格を取るかと言うと、リスクを恐れているからです。もっとも、「恐れている」というのは単に怯えているということだけではなく、リスクに敏感という意味も孕んでます。もともと、経営者にとって法律を知るということは、リスクを回避する意味も強いですから、そういう意味では適性がある人が、士業の資格を持っている。そう思ってもらってもいいでしょう。 一般的に、士業から提案がないのは、このため。要は余計な提案をして、それによって顧問先企業に損害が出たら自分のせいになってしまう。だったら、無難に日常業務だけこなしていた方が良い。こういう判断をする士業は本当に多いものです。だから「相談したら」答えてくれるわけです。そもそも仕事をお願いすることを「依頼」というくらいですから、基本的には「待ち」の人種なんです。だから、あなたの方から積極的に口を出していく必要があります。 (3)成長意欲は非常に高い…けれども 士業はそれぞれの難関試験に合格しています。おそらく、あなたは試験の内容なんて見たこともないと思いますが、あなたの想像よりも遥かに難しいです。それこそ、ほとんどの士業が人生を賭けて受験しています。しかも試験に合格し、開業したら今度は法律の改正や新法施行、通達の確認、各種官公庁からの発表を毎日確認する日々が待っています。 言い換えれば、それだけ勤勉であり、成長意欲がある人たち。そういう人種なのです。とはいえ、全員がそうなのかといえば、これもまたそうではありません。特に一定の数値目標を達成した上で理念も目標も何もない場合は、勉強をやめて怠惰退廃している士業もいますので、そのあたりは要注意です。 (4)自己肯定感が低い 最初は自信がない。徐々に経験を積むことで、自信がつく。これはどの業界でも当たり前のことですが、士業は自信を持てても、自己肯定感が低い人が多く見受けられます。中には自信もあって自己肯定感も高い人もいるのですが、上位1割2割くらいを占めるであろう本物のプロ士業以外は、「このあたり」で悩んでいることが多いのです。 「このあたり」とはどういうことか?上位のプロ士業は、明確な理念と目標を持って邁進しています。それに対して、そこまでの境地にたどり着けない士業。つまり、「このあたり」とは、「仕事はそれなりにやっているが、今後の明確な目標が見つからず、とりあえず日常業務をこなしている」あたりです。つまり、プロ士業の一歩手前というところでしょうか。 士業の仕事はなかなか高度です。でも、その高度さは、経営者には届きません。例えば、税理士に依頼すれば、決算申告書はできあがる。一方、あなたが法人で、消費税課税事業者の場合、自分で申告をやってみるとしましょう、恐らくまず無理です。だから、理解されない仕事をしているわけです。しかも、ミス0がデファクト・スタンダード。1円のズレも許されないわけですから、本来相当なプレッシャー。なかなかこういった点を理解されないから、士業は自分の仕事が経営者に貢献できているのだろうかと悩むわけです。 それから、同業他社が基本的に同じ仕事をしているというのも、自己肯定感が低い原因です。自分の事務所が仮に潰れても、ほかの事務所に依頼すれば、企業になんら問題は起きない。まあ、このあたりは実力の研鑽不足ということもあるのですが、自分の仕事が世の中にとって必要なのか?と聞かれると、強く言い返せない。そういう状況なのです。 と、いうことはこれらをまとめると、士業に依頼する場合は、「あなたじゃなきゃできない」「大変な仕事をされていて頭が下がる」などの、肯定感のある言葉で接することがポイントになります。これは士業には本当に秘密にしておいてください。核心を突き過ぎていますので。 (5)本当は、感謝されたい なんだかコーチングの授業みたいになってしまいましたが、要はプライドをくすぐるということ。「あなたならできますよね?」と成長意欲を促すこと。そして、士業個人の存在を肯定し、感謝し労うこと。普通のことですが、特に肯定と感謝、労いには飢えてます。具体的な士業の活用の前に、まずはこういった士業の性格特性を知っておきましょう。もちろん、全員がそうだとは言えませんが、プロ士業でも普通の士業でも、基本的な性格構造はこんな感じです。 ただし、士業もバカではないので、表面上の言葉にも敏感です。テクニック的なアプローチは嫌われますので気をつけましょう。前述のように、基本的には勤勉な人種です。最近ではコーチングやコミュニケーション技法などを積極的に学ぶ士業も多いので、心からの気持ちで伝えるようにしましょう。