サウジ戦略判断でも消えない石油市場「政治化」の火種
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原油価格が2014年以来、7年ぶりの高値圏での推移となっている。米国産WTI原油の先物価格は、9月に70ドル、10月に80ドルを超え、直近の最高値では約85ドルを記録した。原油価格80ドル超えで、世界経済への悪影響やインフレ懸念の一要因として世界的な警戒感も高まった。 年初は40ドル台でスタートした原油価格がなぜここまで上昇してきたのか。その基本的な原因は、需給バランスのタイト化であり、その象徴が石油在庫の低下である。世界の石油需要は、2020年のコロナ禍による甚大な影響で「需要蒸発」とも称された劇的な減少から立ち直り、昨年後半以降、緩やかに回復を続けてきた。2021年、2022年と連続で増加を続け、世界の石油需要は、来年はコロナ前(2019年)の水準を回復するものと見込まれている。 他方、石油供給では、世界最大の産油国、米国の生産回復の遅れが目立つ。高コストのシェールオイル生産に牽引されてきた米国の石油生産は、2020年は前年比大幅減産となり、本年は年後半の価格上昇を受けて、ようやくほぼ前年並み(微減)程度になる、と見られている。油価上昇の効果は、来年以降顕在化し、来年の米国石油生産は前年比100万バレル/日(B/D)前後の増産が期待されている。
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小山堅