一般社団法人LINK UPを立ち上げた事を語る阪神近本（左）と石井僚介代表理事（撮影・上山淳一）

　阪神近本光司外野手（29）が25日、全国の離島支援に取り組む一般社団法人「LINK UP」（リンクアップ）を立ち上げることを自身のSNSなどで発表した。理事として参画し、社（兵庫）時代の1学年先輩で代表理事を務める石井僚介氏（30）とタッグを組んで、故郷の兵庫・淡路島や自主トレ地の鹿児島・沖永良部島から活動の輪を広げていく。日刊スポーツなどのインタビューで今後の展望などを明かした。【取材・構成＝中野椋】 　　◇　　　◇　　　◇ 　近本は子どもたちへの思いが人一倍強い。その理由を話し出すと、なかなか止まらない。 　近本　僕がそうだったからじゃないですかね。淡路島で育ってきて海と山があって。他に遊ぶものって本当になくて。でも高校の時に（島の）外に出て、社高校行って。近くにボウリング場があったり。淡路島への帰りに、明石とか三ノ宮があって。そういう経験があったから「こんなに外の世界ってエンタメにあふれているんだな」って。 　大学は関学大、同じ西宮市を拠点とする大阪ガスで社会人野球をプレーした。 　近本　大学、社会人も西宮に住んでいましたけど、都会って、こういう時間とか経験が普通にあるんだなとすごく感じた。田舎にしかないメリットもあるけど、でも（田舎の）子どもたちにとってはそれが普通。都会の子からしたら特別だから（田舎に）行ったりもしますけど、逆は情報量が全然違う。 　だから外の世界を知ってほしい。2年前、沖永良部島の子どもたちを京セラドーム大阪へ招待した。その後、子どもたちから送られてきた手紙には「何でこんなに大きい建物がドームになっているのか」「どうやってつくっているのか」と感想が書かれていた。 　近本　本物を生で見る、本物を経験するということが、映像だったりテレビの中だったりとは、全然違うと感じました。（島の子どもたちは）今まで、見るといったら社会人の草野球を見るとか、お兄ちゃんの野球を見るぐらいだったのが「プロのスポーツってこういうものなんだ」「京セラドームってこんなに大きいものなんだ」「こういう建物なんだ」っていうのは、生で見ないと分からない経験。「何でこういう建物ができるんだろう」「何で電車が動くんだろう」「何で飛行機が飛ぶんだろう」と思ってくれれば、高校や大学に進学するきっかけになると思う。それが人生の分岐点で選択肢が増えることになると思うので、僕らがサポートしていけたら。 　野望もある。日本中の子どもたちに「LINK UP」を通して、いろいろな体験を提供することをビジョンに描く。 　近本　大きく言えば、日本も離島に入るじゃないですか。だからゆくゆくは、日本の子どもたちをいろんな地域、いろんな国への体験プログラムに参加してもらって、日本自体もより活性化していければ。 　その夢のため、近本はこれからもグラウンドに立ち続ける。 　◆「LINK UP」　石井僚介氏が代表理事を務める一般社団法人。阪神近本は理事として参画する。「ふるさとに恩返しを」をビジョンに掲げ、近本個人が出資する他、離島支援、地方創生に賛同する企業からの協賛金を原資に離島への振興活動を行う。今後は個人単位でも支援に参加できるコミュニティーの形成も検討する。詳しいお問い合わせは公式サイト（https://linkup-ckr.com)まで。 　◆石井僚介（いしい・りょうすけ）1993年7月17日、兵庫・小野市生まれ。中学時代は父の仕事の関係で米国へ。米国でも野球を続け、甲子園に出たいという思いから社（兵庫）に進学し、3年春は兵庫県大会準優勝。主に中堅手として右翼手近本の隣を守った。大学でアメリカンフットボールに転向。社会人でも競技を続け日本代表にも選出された。現役時代は身長181センチ、体重88キロ。 　◆阪神選手の主な社会貢献活動　岩貞は熊本地震の「復興支援」と「子どもたちへの野球振興」を目的に、17年から毎年、義援金や野球道具を同県で活動する少年野球チーム、少年野球を運営する団体へ寄贈。原口は18年末に患った大腸がんから復帰したことを機に、小児がん医療ケア施設への訪問などの社会貢献活動を続けている。その他にも青柳、岩崎、西勇ら多くの現役選手が社会貢献活動に参加している。一方で、近本のように現役中に一般社団法人を立ち上げるのはレアケース。鳥谷敬氏は、現役時代から一般社団法人「レッドバード」に理事として参画し、フィリピンなどアジアの恵まれない子どもたちのために使われなくなった靴を集めて現地に贈る活動を展開した。