絵本で伝える戦争 戦争の愚かさや平和の尊さを訴えるために受け継がれてきたバトン
必ずしも子どものための絵本ではない
「原爆の図 丸木美術館」の学芸員で作家の岡村幸宣(ゆきのり)さんは、丸木夫妻の絵本では戦争被害だけでなく捕虜となったアメリカ兵を虐殺するなど、戦場では加害者にもなり得る事を描いていると解説する。 原爆の図 丸木美術館 学芸員 岡村幸宣さん: 隠されていた、当時知らされることのなかった情報を伝える目的で発行されたという意味では、必ずしも子どものための絵本ではないですね。むしろ安く軽く、そして全世代にわかりやすい。普及伝達の手段として本というメディアを選んだと 丸木夫妻は原爆の図や沖縄戦の図を制作するとともに、戦争で傷つけられた人たちの悲しみを絵本でも伝えてきた。岡村さんが紹介した夫婦の作品「おきなわ島のこえ」は1984年に出版された絵本である。 原爆の図 丸木美術館 学芸員 岡村幸宣さん: 子どもたちに向けた最後の言葉が「ワラビンチャーひんぎれよー 命どぅ宝。(こどもたちよ にげなさい。いのちこそ たから)」という言葉なんですね。なぜ再び戦争を起こしてはならないのか。もし起きてしまったときには、どう行動すべきかということを考えたときに、非常に重要かつ明快な言葉として心に突き刺さってくるなと思っています 作家の丸木俊さんは国家が語る歴史ではなく、一人ひとりが目にした戦場を記録し、民話のような形で戦争を伝えていると岡村さんは解説する。
過去に残されたものをしっかりと受け止めること
作家たちの創作活動は受け継がれ、戦争の愚かさや平和の尊さを訴えるため、今も多くの本が出版され続けている。 しかし、その表現は一方的なものであってはならないと指摘する。 原爆の図 丸木美術館 学芸員 岡村幸宣さん: ただし、そのあとから来て参入する人にも責任はあります。それは、過去に残されたものをしっかり受け止めること。新しい人でなければ見えない視点が加わっていって、初めて過去の物語が今に蘇るのだというふうに思っています 本を通して知る戦争。多くの人の命を奪い、未来を奪う戦争の悲惨さを伝えたいと生み出された数々の作品は、平和のバトンとして戦争を知らない世代に託されている。
沖縄テレビ