日本のインバウンドを支える民泊・ゲストハウス、部屋の清掃もおじさんの副業だった!
最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない。本当に年金もらえるの? AIに仕事を奪われる…! 将来の不安から副業を始める中高年男性が増えているのだ。 おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいはまったく稼げていないのか。組織をはみ出し、副業を始める全力おじさんの姿をより深くレポートする。(若月 澪子:フリーライター) 【写真】副業として民泊の清掃を選ぶ人も多い。著者も民泊物件の清掃を体験した ■ 歴史的円安で民泊熱ふたたび 「道に迷った旅人です、一夜の宿をお貸し下さい」 と昔話に出てくる旅人は言う。歴史を振り返れば、旅人が一般家庭に泊まる「民泊」はごく普通のことだった。 今こんなことを言われて、見知らぬ他人を家に泊める人はまずいない。ところが、それを実現させてしまったのがエアビーである。 米国発の「エアビー(エアビーアンドビー)」は、世界中の民泊を掲載するシェアリングエコノミー(モノやスキルの交換をつなぐサービス)だ。日本に上陸したのは2014年である。 部屋を提供するのは、ホテルや旅館ではなく一般人。彼らはエアビーに自分の部屋を登録し(日本では自治体への届け出も必要)、旅行者はごく普通のマンションやアパート、一軒家に泊まる。プロのサービスはないが、安価でかつ素人丸出しの日常を味わえることが民泊の魅力だ。 コロナ禍で下火になっていた民泊は歴史的な円安も追い風になり、ふたたび息を吹き返している。エアビーの「2024年のトレンド予測」によれば、エアビーのサイト内で最も検索された旅行先が「日本」だったという。国内にある民泊の利用者のおよそ半分が、海外からの訪日客である。 そして、この民泊に欠かせないのが、民泊を清掃する人だ。
■ 時給は1200円、でもそれ以上の魅力が 「週に数日、民泊で清掃の副業をやっています。いつか自分で民泊をやりたいので、将来の参考にしようと思って」 こう話すのは都内在住のCさん(45)。眼鏡がキリっとしてバリバリの理系オーラをかましている。 彼の本業は、都内にある私立の中高一貫校の非常勤の数学教師。とはいえ、彼には本業も副業もない。学校の非常勤のほかに、塾講師や家庭教師もかけもちし、パラレルに仕事をこなす自由人である。 Cさんは週に2日ほど、早朝から都内の住宅地にある一軒家の民泊に向かう。とあるオーナーが祖母から相続した家をリフォームし、数年前から民泊としてエアビーに登録している物件だ。 この一軒家には最大8人が宿泊できる。見ず知らずの旅人同士が一軒家で交流できるのがウリだ。 Cさんの役目はゴミ捨て、トイレや台所など共有部分の清掃。退出したゲスト(宿泊客)のリネン類を抱えてコインランドリーへも走る。多い時は8組のシーツ、布団カバー、枕カバーを洗濯するため、ランドリーの洗濯機を4台分ほど占領することもある。 時給は1200円だが、Cさんにとってはそれ以外の報酬が大きい。 「ゲストとの交流が楽しみです。ダイニングスペースでゲストがおのおの食事を取るので、僕がウロチョロしていると自然と会話が生まれる。オーナーの代わりに僕がホスト役を務めている感じ。夜はゲストと一緒に飲みに行くこともあります」 ゲストは日本人のほかに中国人、韓国人、アメリカ人、フランス人など。 「日本語を勉強しに1カ月ぐらい滞在していたフランスの若者たちとはかなり仲良くなりました。みんな日本のアニメが大好きで、僕よりも詳しい。彼らに勧められて『葬送のフリーレン』を見始めたくらいです」 Cさんの副業は楽しそうで、民泊の清掃をやってみたくなる。筆者は「ハロー」と「カメハメハー」くらいしか話せないが、海外の人ともアットホームな環境で交流できるなら素敵な仕事ではないか。