’19熊本西/5止 感謝 期待を背に大舞台へ /熊本
熊本西の選抜出場が決まった1月25日、喜びに沸く同校から約10キロの県立熊本商業高校(熊本市中央区)で、主幹教諭の鬼塚博光さん(52)は思わずガッツポーズした。熊本西の野球部OBで2013年春から昨年春までの5年間、同校の監督と部長を歴任した。 「教え子たちが頑張っている姿がうれしい」と相好を崩す。加えて、熊本西の元村崚吾副部長(24)は鬼塚さんが県立八代東高校(八代市)の監督だった時の教え子だ。熊本西や元村副部長らを甲子園に導けなかっただけに、今回の吉報が本当にうれしい。 熊本西野球部OB会の副会長、上妻(こうづま)宣貴さん(46)は発表当日、出場決定を告げる電話がかかってきた校長室で歓喜の涙を流した。1997年から14年間、コーチとして後輩を指導。その後もOB会として毎年夏、選手を激励してきた。「今年のチームはオーラが違う。甲子園では悔いを残さずやりきってほしい」 熊本西は昨年12月、約300万円かけて打撃マシンと打撃ケージを新調した。予算に限りがある県立校で思い切った投資ができたのは、誰よりも選手らを思う保護者会の支えがあったからだ。マシン代などは今後、保護者が納める部費の中から10年かけて支払っていく予定だ。 経済的支援だけではない。保護者会の会長で霜上幸太郎主将(2年)の父の幸弘さん(51)らは休日になるとグラウンドに出かけ、さびて傷みが目立つ防護ネットの脚を溶接したり、草むしりに精を出したりと骨を折る。「自分たちにできる範囲で、こつこつやりよるだけですよ」。選手らが全力プレーできるのは親の愛があればこそだ。 熊本西では昨年11月の練習試合中、頭部に死球を受けた2年生部員が亡くなった。以降、バックネット裏に供えられている花は、生花店を営む古田朱音(あかね)マネジャー(1年)の父大介さん(45)が朱音さんに託している。「うちは花を届けるぐらいしかできないが、志半ばで亡くなった子のためにも甲子園で頑張ってほしい」 1985年、熊本西が夏の甲子園に初出場した時、応援団の1年生としてアルプスで声をからした岡山真也さん(49)は現在、熊本市西区で靴卸問屋を営む。「母校の甲子園出場に2度も関われて本当に幸せです」。選抜出場を祝って選手ら全員にスクールカラーの紺のベースボールシューズ49足を贈る。 多くの人の期待を背に甲子園に挑む熊本西。恩返しの舞台となる選抜は3月23日の開幕まで1カ月を切った。【清水晃平】=おわり