道長は「気づかない」人? 『光る君へ』撮影も終盤、柄本佑インタビュー「ものを見る目は長けているけど…」
藤式部(まひろ)への返歌のシーン、立ち去った倫子にどんな感情が?
──道長と藤式部の歌のやり取りは、一般的には彼の頭の回転の早さを伝えるエピソードと思われてきましたが、まさか道長のど天然さを知らしめるためのものに変わるとは思いませんでした。 そうですよね、そっちの問題になるんだって。でもあそこは、できあがった映像を見ると、その場から立ち去った倫子(黒木華)さんを見て、ちょっと「あ、まずかったかな?」という風になってたじゃないですか? でもお芝居的には、道長はまるっきり(倫子の気持ちに)気がついてないという風にしていたんです。「え、なんでなんでなんで?」って思いながら追っかけるという、ちょっと振り切ったものに。でも編集段階で「これはやり過ぎかな?」と思われたのか、オンエアでは「あ、これはヤバい」という空気が出てました。 ──まひろとの間にできた賢子の件といい「この人、真実がわかってるの? わかってないの?」というのが読めなくて、視聴者の間でも意見が真っ二つにわかれるという、その塩梅が道長のおもしろいところです。 こっちも「これ、気づいてんの?」って、わからない場面が多々あるんですよ。そこでチーフ演出の中島(由貴)さんに相談したら、スパッと「道長、気づかないよ。彼はもともと気づかない人だよ」って言われるんです(笑)。 ただそれで「じゃあ、全然気づいてない風にやろう」と思って演じても、さっきも言ったように編集でニュアンスが変わったりもするので。だから視聴者の方には、どんな見方をしていただいても、どんな解釈が生まれてもいいと思っています。
敦成親王を東宮にしたいワケには、まひろとの約束が?
──今(取材時点)道長は、娘の彰子(見上愛)が産んだ敦成親王を東宮にしようとしています。これが父・兼家(段田安則)のように権力への欲が生まれたのか、それともいまだに無欲なのかが、これもまた簡単には読めない感じです。 道長としては、やっぱり定子(高畑充希)が産んだ敦康親王(片岡千之助)よりも、孫の敦成が天皇になる方が、政を上手く回しやすいんですよ。まひろと約束した「良い政をする」ための、レールを敷きやすい。 第38回では(息子の)頼通(渡邊圭祐)に「政は家のためではない。民のためだ」と説くシーンがあるので、兼家さんとははっきりとゴールは違うはず。でもはたから見ると、まったく同じことをしているという結果になっているんです。 ──「娘が産んだ皇子を強引に東宮にする」という点は、なんら変わりがないですからね。 そして道長は、そのことにあまり気づいてないんじゃないか? って、僕は思うんですよ。道長さんぐらいの人だったら、そこを繊細に感じて、もっと苦悩するんじゃないかと思うんですけど、そういうことは(台本に)描かれてないので。 だからこの(撮影の)時期は、自分自身がやりながら、ちょっともどかしさを感じていたように思います。言っていることとやっていることのギャップに「なんでかなあ?」と。今となってはそういうところを、だいぶ飛び越えちゃってますけどね(笑)。