72時間雨量 静岡県内8地点で観測史上最大 災害危険度「地域で異なる」【台風10号】
台風10号は1日正午に熱帯低気圧に変わったが、1週間近く大雨が降り続いた静岡県内では雨量の記録更新が相次いだ。72時間雨量は熱海市網代や静岡市駿河区など8地点で観測史上最大を更新した。降り始めからの雨量が8月1カ月分の雨量の3倍以上になっている地点もあり、長時間に及ぶ雨で地盤が緩み、土砂災害が各地で発生している。一方で雨量の数字だけでは災害の発生危険度の判断は難しい。専門家は「その地域にとって大きな雨が降ったかが重要」と指摘する。
8月26日午後5時の降り始め以降、72時間雨量が歴代1位となったのは熱海市網代654ミリ、静岡市駿河区515・5ミリ、藤枝市500ミリ、御前崎市476・5ミリなど。静岡地方気象台によると、26日ごろから、県内は台風の縁と東日本にある太平洋高気圧の縁を回る暖かく湿った空気が合流し、大気の状態が不安定になった。県中西部を中心に雨雲が停滞した。30日以降は台風や熱帯低気圧の影響で中部や東部でまとまった雨雲が発生した。 1日午後6時現在、72時間雨量が県内で最も多かったのは伊豆市天城山の792ミリだが、同地点の観測史上最大値は1983年8月18日の1099ミリ。静岡大防災総合センターの牛山素行教授は「雨量の大きさの意味は地域によって極端に違い、過去の観測値との比較が重要」と強調する。
災害が発生するか否かは短時間雨量も重要な要素の一つという。気象台によると、今回は1時間や3時間雨量の記録更新はなく、記録的短時間大雨情報や線状降水帯が発生した際の「顕著な大雨に関する気象情報」も発表されなかった。牛山教授は「長時間雨量が多くなっている中で、短時間雨量も増えれば、さらに大きな被害となった可能性がある」とみる。 その上で、「雨量の数字だけにとらわれるのではなく、自分の住む地域で洪水や土砂災害、浸水害が発生しやすくなっているかを面的に把握することが大切だ」として、気象庁の「キキクル(危険度分布)」の活用を推奨する。