「泊まれない…」嘆く日本人 1泊17万円の宿も登場、富裕層の訪日客狙った経営で満室の施設も 「共生」探る豪雪地の観光立村
長野県の野沢温泉村、訪日客向けの施設次々登場
モダンな雰囲気の貸別荘には、おしゃれな調度品や最新家電がそろい、パーティー会場だけでなく、オフィスにもなる。「ペットも一緒に泊まれるんですよ」。長野県下高井郡野沢温泉村の計14カ所に宿泊施設を展開する野沢ホスピタリティーの社長、ピーター・ダグラスさん(63)は2月中旬、温泉街の寺湯地区に建てた富裕層向けの貸別荘を前に胸を張った。 【写真】野沢ホスピタリティーが手がける富裕層向けの貸別荘
快適に泊まりたい富裕層、高まるニーズ
古い建物を解体し、昨年2月に完成した高級貸別荘だ。宿泊料金は、ピーク時に素泊まり1泊17万1千円にまで跳ね上がる。今シーズンは長期滞在の訪日客を中心に予約は好調という。「富裕層は快適に泊まりたい」とピーターさん。キッチンやリビング、仕事場のほか、三つの寝室、床暖房などを備える施設は、同社が手がける中でも「ハイレベル」なグレードだが、ニーズは確実に高まっている。 英国出身のピーターさんは2010年に同社を設立した。シンガポールの投資会社に勤務していたが、日本の観光産業に商機を見いだした。温泉街の外湯(共同浴場)など日本情緒を残し、北陸新幹線で東京からもアクセスがいい野沢温泉に魅力を感じたという。「これから国内客もどんどん増える。毎日、漬かれる温泉とテレワークの相性もいい」と意欲的だ。
「日本人を大事に、外国人客をいかに泊めるか」
「日本のリピーターを大事にしながら、外国人客をいかに泊めるかが宿の柱になってきた」。外国人による事業展開の動きに、村で古くから続く宿泊施設を営む日本人も攻めの姿勢に転じている。江戸末期に素泊まりの木賃(きちん)宿として始まった「御宿 野沢屋」を切り盛りする富井靖弘さん(56)もその1人だ。 観光庁の補助制度を活用、多額の自己資金も投じ、昨年に7畳の和室4部屋を、ツインベッドを備えた15畳の和洋室2部屋に改修した。長期滞在で素泊まりが多い訪日客には「部屋の広さが必要」という。今シーズンはほぼ毎日満室が続き、新型コロナ流行前より客足が伸びている。今後も宿の外壁などを改修し誘客を強める。