10年ぶりの再演!舞台『朝日のような夕日をつれて』
鴻上尚史が結成した第三舞台の旗揚げ公演として上演され、劇団解散後も再演を重ねている『朝日のような夕日をつれて』が10年ぶりに上演される。 ストーリーは、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を下敷きに、新製品の開発に狂奔するオモチャ会社「立花トーイ」の物語が交差、そこにもうひとつの世界が加わる多層構造の作品だ。 1981年の旗揚げ公演から2014年までに6回の再演を重ね、熱狂的なファンも数多くいる。公式サイトには、この作品を愛してやまない人々のコメント動画が公開されており、どの年の上演が好きか、印象に残るシーン、出演した際のエピソードなどを語っているのだが、その熱量がとにかくすごい。再演を重ねることで観客の層が広く厚くなり、その目も厳しくなっていくことを感じさせる。 この作品の特徴の一つが、上演される時代に合わせて書き換えられる台本だ。劇中に登場する会社「立花トーイ」では、いつか爆発的にヒットする商品の企画について、男たちが対話を続ける。彼らのセリフに数多く登場するおもちゃは、その時代をうつしたものにどんどん変えられている。初演時にはルービックキューブが登場していたが、再演を重ねるうちにテレビゲームが登場、前回の2014年にはスマホアプリやVRも取り上げられた。 劇中、ギャグのように繰り出される商品アイデアは、その数年後には当たり前のように使われているものも多い。政治や経済を含むその他の世相も数多く織り込まれていて、「おもちゃは時代を現すものだ」というセリフは、そのままこの作品を指しているようにも感じる。戯曲のいくつかのバージョンは出版されているので、試しに読んでみてほしい。 時代にフィットしていく試みは、キャスティングにも反映されている。初演時から大高洋夫が演じてきた部長役は、大河ドラマ「光る君へ」の出演で強い印象を残した玉置玲央が演じ、その他のキャストも20代、30代の俳優たちが起用されている。彼らを生で見て感じたい観客が足を運び、新しい「朝日のような夕日をつれて」が生まれるだろう。 数年後に「あ、あの時の『朝日…』で見たアレだ…」とニヤリとして、また再演に足を運ばずにはいられない。そんな経験をしてみたい人におすすめの作品だ。 Text: Reiko Nakamura