多発するガールズケイリンの落車 女子は適用外の「公傷制度」などルールの整備に期待したい
2023年末、ガールズケイリン選手3人が代謝制度により引退した。なかでも1期生の白井美早子、2期生の田仲敦子は落車によるケガが契機となり引退を余儀なくされた。このコラムでは、ガールズケイリンでの落車について考えたい。
多発する落車、大前提は「しない、させない」
昨年に続き、今年もガールズケイリンでの落車が多く見られる。前記の白井美早子や田仲敦子のように落車が原因で選手生活が終わってしまった選手もおり、ガールズケイリンの公傷制度について考える時期が来ているのかもしれない。 落車は当然、どの選手も故意にやっている事例は一件もない。どの選手もただただ勝ちたい気持ちが前面に出過ぎて、接触や強引な位置取りをしてしまうケースが多いように見受けられる。 大前提は「落車をしない、させない」こと。これは競輪選手がレースに臨む上でもっとも大事なことだと思う。落車は選手にとっても痛いが、車券を買っているファンのことをがっかりさせてしまうからだ。
ルール違反を厳しく取り締まるべき
審判の判定も重要だ。ガールズケイリンは特にヨコの動きが原則禁止されている。これは男子の競輪との大きな違いだ。 落車の有無に関係なく、重大走行注意、失格はしっかりとるべきだと思う。 ルール違反をしっかり取り締まれば、自ずと選手たちも真っすぐ走るようになるだろう。違反点の累積は、違反訓練や1か月、2か月の「あっせんしない処置」というペナルティを受ける。罰則によりレースに出られなくなれば選手たちは収入が減るだけに、危険な走りは控えると思う。
女子は適用外の「公傷制度」
それから公傷制度だ。 ざっとだが、男子の競輪の場合は、競走における事故(自らが失格になる行為は除く)で、31日以上の治療日数を要すると診断された場合は、規定される最低出走回数を越えていない場合に限り、同じ級班が保証される(これを公傷制度と呼ぶ)。ただし、このルールはA級3班(チャレンジ)の選手とL級1班のガールズケイリン選手には適用されない。 クラス分けがまだできないガールズケイリンの場合、トップクラスのレーサーでも競走中に落車をして長期欠場になり、最低出走回数に届かない場合は修正用基準点数(いわゆる見なし点数)で成績が付けられる。これにより競走得点は下がり、欠場期間が長くなれば代謝の対象にもなる。そのためか万全の状態ではなくてもレースに復帰し、走る選手を多く見てきた。 ただし公傷制度は悪用される可能性もないとは言い切れず、慎重に取り扱うべき問題だ。たとえば制度適用の条件を設け、落車前の直近4か月の競走得点を参考にするという方法もいいのではないだろうか。 田仲敦子や白井美早子の場合も公傷制度があったなら、じっくり休み、治療をしっかりしてからレースに復帰するという判断もできたかもしれない。
より魅力的な「ガールズケイリン」に
2023年はガールズケイリンにGIレースが新設され、グランプリを頂点とするロードマップが完成してきた。この先はルールや制度、待遇面での改革も大事になってくる。 この先20年、30年とガールズケイリンが続くためには新しい世代の選手の参加は大事なこと。若者たちの憧れとなる、より魅力的な「ガールズケイリン」であり続けるためにも、選手たちが安心して走れる制度の整備を期待したい。