動物たちの飼育環境に知恵をしぼれ!アニマルウェルフェア(動物福祉)の今
サル山やイルカショーも姿を消す
日本各地の動物園や水族館でも、ニホンザルは暑さに弱いため、名物だったサル山を取り壊して涼しい日陰ができる森を作ることにしたり、北海道の動物園では、地元に生息するヒグマの展示スペースを3倍の広さにして、クマが窮屈さでストレスを感じないようにしたりしている。水族館では、人気のイルカショーをやめるところもある。世界各国でイルカの展示自体が少なくなっていて、そんな海外の潮流に歩調を合わせている。
野生動物を守るには?
課題もある。動物園や水族館で展示する生き物の数が、世界的に少なくなっている。京都の動物園でも、人気のライオン最後の1頭が死んで、飼育をやめることにしたそうだ。東山動物園でもライオンは1頭だけだったが、2024年4月に再び2頭目が来園した。今や野生動物たちは希少価値であり、ワシントン条約など、取引の規制はますます厳しくなっている。輸入する時に「アニマルウェルフェア」への施設対応がきちんとなされているかも課題になる。当然、費用もかかる。日本は公立の動物園や水族館が多く、自治体の予算で運営するため「アニマルウェルフェア」に取り組みたくても、ままならない現実もある。来園者や企業から寄付金を募る「サポーター制度」を導入するところも増えている。
まさに"ゴールのない課題"
動物園や水族館は、憩いの場としても、学びの場としても、とても有意義で重要だ。特に子どもたちにとって、そこでの思い出はかけがえのないものとなるだろう。こうした貴重な動物たちをどう守っていくのか。東山動物園では「動物園でいろいろな動物を飼育していく限り、アニマルウェルフェアの取り組みは、ずっと続けていかなければならない課題、すなわち"ゴールのない課題"である」と話している。 ますます本格化する「アニマルウェルフェア」への取り組みは、私たちと動物たちの将来に向けての関係へ、大きなテーマを投げかけている。その試金石の先に、動物園や水族館の将来の姿があるのだろう。 【東西南北論説風(493) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
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