『ONE DAY』各編を牽引した二宮和也×大沢たかお×中谷美紀 誠司×時生×桔梗の行く末は?
クリスマスイブの1日を約3カ月かけて描くという驚きのコンセプトで発表時から私たちをワクワクさせてくれた『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)がいよいよ最終回を迎える。第1話の放送時は、時々映し出されるクリスマスらしい雰囲気に違和感があったが、今やすっかり街中がクリスマス一色。いつの間にか季節が作品の方に追いついている。 【写真】『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』中谷美紀インタビューカット 発砲殺人事件の現場から物語がスタートしたこともあり、本作にはずっと不穏な空気が漂っていた。たとえば時生(大沢たかお)と娘の査子(福本莉子)が親子の絆を確かめ合って少し温かい気持ちになっても、桔梗(中谷美紀)が思うように働かせてもらえず、辛酸をなめ、一緒に悔しい気持ちにさせられた。一方で、誠司(二宮和也)が巻き込まれた事件は解決せず、彼は記憶がない中、警察から逃げ、国際犯罪組織「アネモネ」ではなんでもないように振る舞っている姿を観てドキドキが止まらない。この1日で3人を取り巻く環境は大きく変わり、その人自身の変化も見て取れるようになった。 なんとかクリスマスディナーを始めた葵亭のシェフ・時生は、料理を提供しつつ笑顔になっていた。満足のいくものを提供しようと粘り、メインディッシュの完成に時間がかかるからと葵亭のメンバーになんとか場を繋がせ、ついにできたかと思えば料理のうんちくを語り出そうとする時生は最後まで頑固で気難しく、はっきり言えば面倒な人であった。でも、梅雨美(桜井ユキ)や一(井之脇海)、菊蔵(栗原英雄)はそんな時生を「ついていきたいシェフ」として慕ってくれている。時生にとっては仲間の大切さを実感できた1日になったのではないだろうか。物語の中では、コミカルで“浮いている感”もあった「レストラン編」。だが、キーマンの1人として誠司と向き合ったり、桔梗と言葉を交わしたりする時生はお調子者の雰囲気を一切感じさせず、ただただ真っ直ぐで誠実な人であった。場面に合わせて時には振り切った演技ができるのは、ドラマ、映画、舞台、そしてアニメ映画の声優などさまざまなフィールドで長年活躍してきた大沢たかおのなせる技だろう。ついに次回、メインディッシュが提供される。葵亭のメンバーと話していく中で閃いたように作り始めたそれは、一体どんなものになるのだろうか。 報道キャスターとして活躍したいと思っていたが、局との方針が合わず、ついに報道番組『日曜NEWS11』を降ろされてしまい、孤立無援だった桔梗にも笑顔が戻ってきた。誠司が関わっている事件に興味を持ち、周りを圧倒する熱量ととにかく走り回る取材力で、誰よりも早く誠司が実は天樹勇太という人物であることを特定した桔梗。その「報道マン」としての自覚と行動は、上司に従っていい顔をすることがすべてだった同僚たちの意識を変えていった。しかし、仲間が増えても桔梗は桔梗のままだ。今でも真実を追い求め、どこよりも早くそれを報道したいと願っている。“その人らしさ”は失っていないが確実に変化していることを感じさせる絶妙な演技は、『連続ドラマW ギバーテイカー』(WOWOW)で娘を殺された元小学校教諭の刑事を演じるなど、数々の難役に挑戦してきた中谷美紀ならではのものになっている。「アネモネ」の取引現場と警察の不正を暴きたかった桔梗は土壇場でピンチに陥っている。果たして、最終回でその目的を果たすことができるのだろうか。 この2人と違って、まだ笑顔になれそうにないのが誠司である。潜入捜査官として「アネモネ」に5年も潜入していたが、それもついにミズキ(中川大志)にバレ、以前のような信頼は寄せられていない。警察は誠司をダシにして犯罪組織を撲滅させようとしているが、いざという時に誠司を守ってはくれなさそうだ。今のところの朗報は、彼が全ての記憶を取り戻したことだろう。そのきっかけは本当にふとしたことのようで、誠司がミズキと出会った時の話を始めた時、その淡々として何気ない様子にしばらくは記憶が戻っていることに気がつかなかったほどだ。 多くの人の運命を変えるであろうメキシコの密輸組織との取引は目前だ。これまで取引場所の変更は3回だが、どこまでが誠司の想定内なのだろう。変更するごとに「アネモネ」と警察内部の内通者や蜜谷(江口洋介)を欺いてきたことを考えるとすべて誠司の手の中にあるような気もする。最後の最後にミステリアスな役柄を得意とする二宮和也の本領が発揮されていて、記憶を取り戻した瞬間が分からなかっただけではなく、誠司の真意や今後の展開が全く読めなくなっている。でも、不安要素がなくなった誠司にとってその類まれなる能力を使って場の主導権を握ることは容易いだろう。ここで周囲を翻弄するような活躍を見せてほしい。 濃密な3カ月が凝縮された1日がついに終わろうとしている。世はきらびやかな装飾が輝き、クリスマスソングが鳴り響く聖夜だ。良いことも良くないこともたくさんあったが、最後はそんな日にふさわしい、素敵な終わりになることを願っている。
久保田ひかる