万葉の湯閉館から見えてきた厳しい業界の課題
記者 「福岡市博多区の万葉の湯にきています。入り口に入ると、8月28日をもって閉館するお知らせが掲示されています」 施設の老朽化に加え、燃料費や人件費の高騰などを理由に今年8月末での閉館を発表した万葉の湯。 山口県から来た客 「残念。22~23年くらい来ている。どこか次の会社が経営を引き継いで続けてほしい」 福岡市内から来た客 「きのう、おとといも来た。武雄や湯布院から湯を運んでいる。コストも結構かかるのだと思う」 2001年に前身の温浴施設をリニューアルしてオープンした万葉の湯。九州の人気温泉地から源泉を毎日運び、年間30万人の利用客を癒やしてきました。 万葉の湯では老朽化した施設の建て替えを含めた大規模工事も検討してきましたが、昨今の燃料費や資材費の高騰などを背景にやむなく閉館の決断をしたといいます。 温浴施設が抱える問題に詳しい望月義尚さん。全国の施設の経営コンサルタントを30年近く行ってきました。万葉の湯のようなスーパー銭湯の数はこの20年、県内で2割ほど減っていて望月さんは運営が厳しい施設の問題点を次のように指摘します。 問題その1「水回り設備の更新費用」 温浴施設コンサルタント アクトパス 望月義尚社長 「温浴施設は特に水回りの部分で非常に大きな設備投資が必要になる。一般的なショッピングセンターなどの商業施設をつくる時に比べれば、3倍ぐらいの費用がかかってる」 温浴施設には欠かせないボイラーなどの「水回り設備」は10年から15年で更新が必要で大型の施設だと億単位の費用が必要になることもあり、経営を圧迫する大きな要素になるといいます。 問題その2「入浴料上げたくても・・・」 温浴施設コンサルタント アクトパス 望月義尚社長 「下手するとラーメン1杯よりも安かったりする入浴料。商売はなかなか成立しない」 コロナ禍で客が激減した温浴業界。燃料費などの高騰もあり本来は入浴料を上げたいところですが、客離れが加速するため慎重にならざるを得ない状況だといいます。 このような厳しい状況でリニューアルに踏み切った施設があります。福岡市博多区中洲にある創業40年のグリーンランド。カプセルホテルも運営しているため福岡の歓楽街で長年に渡り親しまれてきました。リニューアルオープンは来月の予定です。 グリーンランドグループ 日創 安東伸章社長 「こちらが浴槽になります。(記者Q今回のリニューアルで浴槽は変えた)今回浴槽に関しては特に変更点はない、そのまま営業する。変えた場所が、高温サウナの工事を進めている」 費用のかかる浴槽はリニューアルをせず維持管理コストが半分以下という「サウナ」に特化します。 グリーンランドグループ 日創 安東伸章社長 「浴槽だと(湯の)循環系の設備、ろ過装置にも(費用が)かかる。サウナだとヒーターだけでいい。3500万円ほどかけて工事をしている」 サウナの料金は90分1000円。利用しやすい料金に設定しました。 グリーンランドグループ 日創 安東伸章社長 「こちら(サウナ利用)だけでは経営は成り立たない。ほとんど利益もでない。館内利用をしてもらうことで、経営の安定化を図りたい」 そう、サウナを呼び水にしてレストランやマッサージなどの利用を促し、長時間滞在を狙う戦略です。 グリーンランドグループ 日創 安東伸章社長 「コンセプトはおじさんたちのユートピア」 ターゲットはずばり中年男性。リモートワークができる場所などこれまでなかった新たなスペースを設け中年男性の体だけでなく心も癒やします。 グリーンランドグループ 日創 安東伸章社長 「スナックエリアと呼んでいて、音楽を楽しんだり本など、1人の時間を作りやすいスペースとして生まれ変わらせる。いろんな人がつながって元気になる場所であり続けたい」 歓楽街に立地するメリットを生かすため新たな戦略を打ち出した施設。取り巻く環境が厳しくなるなか来月、再出発します。
テレQ(TVQ九州放送)