門前歓喜「ここで頑張る」 總持寺祖院が重文に 伽藍復旧と誘客に期待
●二重被災も復興へ決意新た 元日の震災、9月の豪雨と度重なる大災害で疲弊しきった輪島市門前町に朗報が届いた。總持寺祖院が重要文化財に指定される見通しとなった18日、地元住民は「何よりの励み」「心の支えになる」と喜び、復興への決意を新たにした。重文指定により、破損した伽藍(がらん)などの復旧に弾みがつけば誘客にもプラスに働くとみられ、被災者の1人は「これからもここで頑張っていこうという気持ちになった」と希望を口にした。 【写真】重要文化財への指定が答申された總持寺祖院=輪島市門前町(ドローンから) 「国の支援を得て、お寺を早く直してほしい」。総持寺通り協同組合の宮下杏里さん(33)は、地震で損壊した建物の早期修復と、観光客の増加に伴うにぎわい創出に期待した。 宮下さんは正月の地震で自宅が全壊し、現在も仮設住宅で生活を送る。復旧復興が思うように進まない中、追い打ちをかけるように記録的豪雨が発生。市外への移住という選択肢が頭をよぎっていた。 それだけに、重文内定の知らせを聞いた時のうれしさも大きかった。「これからも門前で頑張っていこう、そういうモチベーションになる」と宮下さん。幼い頃から身近な存在だった總持寺祖院にスポットが当たることを自分のことのように喜んだ。 1321(元亨(げんこう)元)年に開創された總持寺は地元で「本山(ほんざん)さん」と呼ばれ、長年にわたり親しまれている。震災前は地域のイベントに祖院が参加したり、祖院の法要の際に地元商店が境内に出店したりと、互いに協力し合ってきた。 總持寺通りで薬局を営む五十嵐義憲さん(77)はこうした経緯に触れ、「重文になることが門前の人の励みになる」と強調。総持寺通り協同組合の能村武文代表理事は「重文に指定されることで町に光が当たり、町がにぎやかになる」と語った。 同じ通りに店を構える沢田陶器店の澤田由紀子さん(74)は「重文になっても住民に身近な本山さんであり続けてほしい」と願った。 ●知事「魅力向上に」 總持寺祖院の重要文化財指定が答申されたことを受け、馳浩知事は「門前地域のシンボルであり、能登の復興にとって大変明るい話題。今後の保存と活用がより一層図られ、能登全体の魅力向上に大きく寄与することを期待している」とのコメントを発表した。 ●市長「市民に朗報」 輪島市の坂口茂市長は「市民にとって朗報だ。總持寺祖院を大切な文化財として保存継承していくとともに、復旧復興の象徴として教育や観光などさまざまな分野で活用していきたい」とした。